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ほころび(土沖)


青い空には涙が出る。
あの日のやさしい記憶、
今は昔、
何時か繰り返す日を夢見る。

誰も居ない腕のなか、思えばあの頃も風を掴むようで、苦しい笑顔を浮かべる君を繋ぎ留める度に心は、


「総司、」

「・・・・・土方さん、って」


抱き寄せて、強く、逃がさない、そんな風に抱いても哀しくて、甘えん坊だなぁ、笑う君まで、


「・・・・・甘えんぼさん」

「うるせえ」

「ねえ、貴方が好きです」

「ああ、」


背に手を回して結わいた髪を解いてやり、何時もの様に手櫛で梳けばやわらかく、黒く流れる、自分がもし何かを譲り受けられるとすればほしいのは、こんな髪だと思う。

ほころんだままの心、傷む胸の傷、好きで好きで、どんなに愛し合っても意味なんて無くても、子なんて望まないし理解なんて要らない、やっぱり、


「好きなんだ、」


暑い九月、流れない雲に青すぎる、瞳に痛い空、欝陶しい緑に揺れる世界、細い身体に白い肌、所々咲く紅、甘い髪、どうしようもなく愛した証拠が、


「・・・・・、」


ああ、いつか何時の日か来る哀しい別れの日まで、愛してほしい、ぜったいに離さないでほしい、心も身体も、いっぱいにしてほしい、

そう言っては泣く不安定な君は、分かっていたのだろうか、こんな別れ方をする事を、元より細い身体のさらに病弱な表情を、隠す血の跡を、


「・・・・・あいたい」


虚しく響く弱い声、悲しみを跨いで生まれた治らない心のほころび、いない君、後を追いかけて、眩しい位にきらきら光る境の向こうではきっと、こんな世界なんて、










..fin.

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