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彼にはご注意(土沖/あまい?)
今夜も碌に眠れそうにない。
毎日毎日雑務をこなし続けるのが当たり前になっていて、睡眠不足気味だ。
深夜には草木も眠る、と言うが薄気味が悪いほどまったくの無音で、自分だけ違う世界に言ってしまった様な気がする。

早く終わらせ眠りたくて考えるのを止め、筆を走らせて暫くすると、小さな足音が近づいてくる。
何だろう。
こんな時間に起きているのは自分くらいの筈だ。

障子にすっと影が映り、可愛い夜更かし者を報せた。


「総司か」

「土方さん・・・・・」


こんな時間まで何をしていたのか、右頬に手を当て眉をしかめていた。


「夜更かしはするなと、言ってあるだろう」

「歯が痛くて・・・・・」


申し訳なさそうに障子の前に座る総司は泣く程痛いのか目は赤く目蓋は涙に濡れていた。


「山崎君は?」

「たぶん、寝ていると思って・・・・・」

「部屋は覗いたのか」

「まっすぐ、貴方の部屋に来たから」


何かあれば自分を頼ってくるところがまた愛しく思う。
大体自分は医学の知識など殆ど無く、薬の行商だって名目だけの様なものだ。
抜くのが一番だが流石にこんな時間なら町医者も眠っているだろう、とりあえずは痛み止めを塗ってやる。
飾りの様だった薬箱を開け、痛み止めの軟膏を取り出す。
これは歯自体に塗る麻酔薬のようなもので、塗って暫くすると痛みが軽減、軽いものなら消失する。


「軟膏を塗ってやるから口を開けてみな」


覗き込んでみると右上の奥歯にぽっかりと穴が開いている。


「どこが痛い?」

「・・・・・右側の歯全部です」


しかし目立った穴は右上の奥歯にしか無く、奥歯の虫歯により右側の歯全部が疼く様だった。
・・・・・と真面目に考えてはいたが実際、総司と何日も体を重ねていないことを除いても桃色の唇や真っ赤な舌、糸を引く口内は物凄く魅力的だ。
何処にどの様に軟膏を塗るか、口内に手を入れてあちこち除き意識を散らそうとする。
その間にも熱い吐息や柔らかな内壁が誘う様に映る。
魅せられ、引き込まれ、もうこれ以上に無い程。


気がつけば口を吸っていた。
桃色の形の良い唇のやわらかさが心地よく、吸う、と言うよりは口内を犯す、唾液すらも全て舐め取り飲み乾す程に。


「んっ、・・・・・あ、んんっ、」


艶かしい声が脳内を支配する。
上気した頬が理性を無くす。
その瞬間が、一番罪悪感に苛まれ、一番狂おしい程興奮する瞬間。

耐えられず組み敷き、陶磁器のように滑らかで真白な肌を撫でる様に舐めればもう、












「・・・・・なぁ、悪かったって」

「もう二度と、貴方は頼りません」

「菓子、菓子買いに連れて行ってやるから」

「歯が痛いので、結構です」



その後数日間、総司は口すら利いてくれず、軟膏も使うこと無く薬箱の中に帰ったとか。




..fin.

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