[携帯モード] [URL送信]
しあわせ(土沖)

生まれて初めて人を好きになった。

この気持ちがすごく照れくさかった。

知られたくなかった。





いつも暇さえできれば土方さんの部屋へ行く。
構って欲しいときはお菓子をあげてからかったり、肩をもんだり、後ろから目隠しをしたりするし、ただ何となく傍にいたいときはぼーっと彼の仕事ぶりを眺めたり、畳に寝転がったり(いつの間にか寝ているけど)する。
もうずっと昔からだから当たり前のようにしてきたし、何故か彼の傍が居心地がよかっただけなのだが、他の隊士達からすればかなり私は恐いもの知らずに見えるらしい。
それより私が嬉しかったのは、一緒に居なくても彼が私のことを考えてくれていることがわかるとき。
そんなときに何だかどきどきしてしまう。
そしてほんの一瞬壊れそうにはかない顔を見せてくれるとき。
そんなのが、申し訳ないけど格別なの。

多分私は小さな頃から土方さんが大好き。
多分じゃなくても愛してる。
生まれて初めて好きになった人。
でも誰かを好きだなんて気持ちが恥ずかしくて、ずっと隠してきた。
嬉しいって感じるのも恥ずかしくて何もないそぶりをしてた。

だけど今日誰かが言っていた。

「副長は沖田総司が好き」

土方さんが私を好きだと。
私に、恋をしていると。


好きな人に好かれること、嬉しいけど、土方さんを好きになってよかったけど、でももし私も土方さんを好きだって知られたら恥ずかしいよ、だって私、今まで告白とかしたことないしいったいどうすればいいのかな、、


「総司?何、惚けた顔してんだ」

「土方さん・・・・・」


気づいたら縁側でぐるぐると考え込んでいた。
もう一番隊は見回りの時間だぞ、と普段と変わらなく言う土方さんは、本当に私のこと好きなのかな・・・・・


「あの、土方さん」

「ん?」


ああ、この人、いつもこんな顔していればいいのにな。
本当は眉間にしわを寄せた顔よりこんな溶けるみたいなやわらかい顔が似合う人なのに。


「私のこと、好きなんですか?」

「・・・・・え?」


土方さんらしくないなあ。
いつも遊郭のお姉さんには好きだとか言ってるのに。


「聞こえちゃったんですけど・・・・・好きなんですか?」

「総司・・・・・お前さ、もっと何かこう・・・・・」


あれ、怒らせちゃったのかな。


「・・・・・お前は?」

「私ですか?」

「俺のこと、好きなのか?」

「恥ずかしいです・・・・・」


わがままですよね、分かってる。
人には言わせて自分は言わないなんてわがままだけど、でも・・・・・


「俺は、好き」

「私を?」

「お前を、」

「土方さん・・・・・」



ああ、そっか。
恥ずかしくなんてないんだ。
だってこんなに嬉しいもん、
私も貴方が大好き。


「恥ずかしかったんですよー」

「何がだ?」


まったく状況を分かってない土方さんに、立ち上がってぎゅっと抱きついたら彼の鼓動が早くなった。


「好き、って気持ちが恥ずかしかったの」

「・・・・・可愛いな」


ほら、だって、すきってだけで、

こんなにしあわせ。








..fin.

[前作][次作]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!