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風邪【リョ菊】

3-6の教室から小さな咳が聞こえてくる。
咳をした本人…菊丸英二は周りを気にしながらも静かに咳をする。

「ケホケホ…」


今は授業中

先生の授業に集中して聞いている周りは誰が咳をしているのかは分からない。
英二は寝てるフリをし、咳をする時は最低限に小さくしていた。



この時間帯に咳が急に出始めた。
否、今日の朝から咳は出ていた。

しかし試合が近いという時に学校を休む訳には行かない。
それに周りに心配や迷惑をかけるのが大嫌いだった。


「ケホ…」

段々と咳が悪化していき、呼吸もし辛くなっていく。
咳を何回もしているお陰か、頭痛もしてきた。


「(頭がボーっとしてきたにゃ……)」


寝てるフリをしながら英二はそっと首に手を当てる。



首が熱い…



手も熱い

頬も熱い


体中が熱い…




でも英二は保健室に行くつもりはさらさらなかった。


自分が元気ないと周りは必ず心配する。

自分の体調が悪かったら周りに迷惑が掛かる。



英二が一番嫌いなのは周りに迷惑や心配を掛けるのが大嫌いだった


だから朝から何時も通りに過ごし、笑顔で振る舞ってきた。

「(後二時間…。後二時間だけにゃ……)」


手や足が痺れてきている事は英二自身にも分かる。

ゆっくりと起き上がり、黒板に書いてある字を一生懸命ノートに写す。

後二時間だけ…

英二は痺れてきている手を必死に動かしながらノートに写す。



後二時間…






チャイムの音が鳴ると同時に少しの安堵を覚える。
疲れた様子で息を吐き、ゆっくりと深呼吸をする。


「(んにゃ…まだ平気……)」


自分自身に喝を入れ、ノートや教科書を机の中にしまい込む。


「英二」


するとそこに親友とも呼べる、不二が英二の席に来た。
片手には弁当を持ち、一緒に食べよっかと微笑まれる。

「食べよ食べよー!!」

風邪か分からない自分に本当は近付いて欲しくないと思った。
だがここで違う行動をすれば、不二は絶対に気付くと思った英二は普段と変わらないようにした。

不二が気付かれない程度の少しの距離を置き、普段と変わらないように会話をした。


食欲がない英二だったが無理に食べ物を喉に通す。
少し吐き気に襲われるがなんとか堪える。

その様子を見ていた不二は不審に思い、何かを思い出したかのように話を切り替えた。


「英二さ、さっき咳をしてたけど……。風邪?」

ジッと見る不二を見て、英二は流石不二だなーと感心しながら何時もの様に笑った。

「あー…あれは咽せただけ!恥ずかしい所見られてたかにゃー」

「失敗失敗」と悪戯っぽく舌を出して笑うと不二は納得をしたのか「そうだったんだ」とクスリと笑った。









その後英二は「トイレに行ってくるにゃー!」と明るく振る舞いながら不二に言うと、バレないように保健室に向う。

途中で知り合いに会わないように警戒をしながらも、注意を払ってなんとか保健室の所まで着いた。


「(足元もフラフラしてきたかも…)」


とりあえず保健室にいる先生にさり気なく体温計を計り、熱を確認してからまた教室に戻ろうと思いながら扉を開けた。


そこには英二がいると思っていた人物は不在
代わりに英二が知っている人物と遭遇してしまった。



「菊丸先輩…?」



その人物も驚いた様子で英二の事を見上げる。

「…にゃんでおチビがいるの?」

今までの苦労が…と内心呟きながら保健室の中にと入ると、おチビことリョーマは器用に左手を手当てしていた。

朝練の時にこんな怪我していなかった筈

英二は気になってリョーマの少し離れた椅子に座って、様子を見た。


「にゃに?怪我でもしたの??つか勝手に使っちゃいけないぞっ」

「…ちゃんと許可取ったッスよ。ちょうど早退する生徒を送る事になったみたいなんで」

「そうだったのかー。怪我の方は大丈夫にゃの?」

「……ただ切っただけッスから」

両利きのリョーマは慣れた手付きで切ったと思われる手の甲に絆創膏を貼っていく。
その傷は少し深く切っているのか、絆創膏から血が滲み出ている。

痛々しいなと思いながら手当てをし終わるリョーマをずっと出ていくのを待つ。


するとリョーマは元にあった救急箱を戸棚に入れ、出入り口の所まで向かい扉に手を伸ばす


だが、触れるか触れないくらいの距離でピタリと止まってしまった。

不思議に思った英二はまだ用事があるのかと思い、首を傾げる。



「………菊丸先輩ってさ、もしかして体調悪い?」

「へ?」

無愛想な後輩から心配されているのだと一瞬分からなかった。
気の抜けた声で返事をしてしまい、少しの焦りが

「体調悪くにゃいよー?そしたら学校休むって」

元気に振る舞うがリョーマは不機嫌な顔になりながら、英二に近付き見下ろす様に見詰める。


英二の顔は何時もより赤く、瞳も潤んでいた。
少し辛いのか眉が普段より少し下がっている。


「無理、してない?」

「無理してにゃいよ」

「嘘だね。顔が真っ赤だよ」

「さっき走ったから顔が真っ赤にゃんだよ」


英二から返ってくる返事は全て否定の言葉。
こういう時に頑固なのかとリョーマは内心で思った。

「じゃあ何でここに?」

そう言われた瞬間、英二は返答に迷った。
めったに行かないここにいる理由。
痛いとこを突かれたと思いながら英二は必死になって考える。

「それは…暇、だった……から?」

「なんで疑問系なんスか」

「……………」

黙ってしまった英二はリョーマを見て、もう言い訳は出来ないと思い溜め息をした。
重い身体をゆっくりと立ち上がり体温計に手を伸ばす。

「ちょーと身体がダルいだけ。おチビよく分かったね」

口に体温計を含み、すぐ近くにあったベッドに腰を掛ける。
未だに苦しい表情を見せない英二を見てリョーマは深い溜め息をし、椅子を引いて英二の真っ正面になるように座る。

「菊丸先輩の事を見てれば分かる」

「へ…?」

それはどういう意味?という表情で首を傾げる。
そんな仕草が可愛いなと思いながらリョーマは英二がくわえている体温計をさり気なく奪い取る。

しまったという顔をする英二はすぐに体温計を奪い取ろうとするがそれはもう遅い。


「……38.4℃って、あんた馬鹿でしょ」

呆れたという顔で英二を見ると拗ねた顔でそっぽを向いていた。


「これは早退しないとダメッスね。オレが先生の所に行って説明してくるんで」

椅子から立ち上がろうとしたがそれは英二によって制された。
熱があるお陰か、制服の裾を握り締める力が弱い。


「早退だけは…したくにゃい……。みんなに心配されるのは…やだよぉ……」


それはまるで子供

震える身体でリョーマを抱き締める。
スリスリと顔をお腹に擦り付け「行かないで」とも言ってるようにも見えた。

それはリョーマの気のせいだろうか?



「菊丸先輩…」


「こんぐらいへっちゃらにゃんだよぉ…。だから……早退はしにゃい…」


ギュッと抱き締める力が強くなる。
そこまでもして周りの事を考える英二を見てリョーマは溜め息しか出てこない。
英二の頭を優しく撫でると抱き締められている両手を外すと、優しくベッドに横たわらせる。


頭の上に?マークを浮かばせる英二



「一時限くらいはサボっちゃいましょ?だからここで少し休んで下さい。」

「でも…不二が……」

「その次の授業に出ればいッスよ。でも部活に出るのは許さないから」

「部活に出ないとみんなが…」

「出るって言うんでしたら早退させますよ?」

「う゛…」

恨めしそうに睨む英二だがリョーマは勝ち誇った笑みで英二を見下ろしている。
負けを認めたくない英二だが、これは無理だと悟り目を瞑った。


それを確認したリョーマはやれやれとした表情で英二に少しでもよくなるように、冷えピタと薬を探そうと離れようとすると、また裾を掴まれた。

英二の方へと振り向けば、英二は自分自身の行動に驚いたのか
慌ててベッドの中へと顔を隠す。


「先輩?」

「にゃ、にゃんでもない…」

もごもごとベッドの中から顔を出さない。
素直じゃないなと思いながらリョーマは英二の頭をもう一回撫でる。

ビクッとした後は硬直し、恐る恐るベッドの中から顔を出してくる。



あぁ…可愛いな……


「オレもサボります。英二先輩の様子を見ているので」

「授業に出にゃいとダメだよ…」

「どうせ英語なんで。それに先生に言わないとダメですし」

「でも……」

「オレが好きでやってるんス。英二先輩は気にしないで寝て下さい。」


額に手を乗せた後に優しく頭を撫でる。
英二はちょうどいいリョーマの体温が心地いい。

段々と瞼が落ちていき、英二は夢の中へ……




規則正しい寝息ではないが、英二が眠ったことが分かった。
リョーマはすぐに冷えピタを英二の額に貼りつけ、また同じように頭撫でる。



「菊丸先輩の顔を見れば分かるよ…。だってオレは菊丸先輩のこと----」












------好きなんだから


END











*おまけ*

〜部活中〜


不二「ねぇ越前、英二見なかった?」

越前「……さぁ、知らないッス」

不二「そっか、英二はちゃんと部活出ないで家に帰ったんだね。偉い偉い」

越前「………知ってたんスか?」
不二「この僕が英二の体調に気付かないなんて有り得ないよ。まぁ、でも残念ながらみんな気付いてると思うけどね」

越前「そッスね。だって菊丸先輩が嘘をついてる時は……」


越前・不二「「必ず猫語」」



―――――――――――――――――――――――――――――――――
+あとがき+

英二は周りを心配させるのが嫌だと思うんですよね。
英二がネコ語を使うときは嘘をついている時か体調が悪い時か恥ずかしがっている時だと思うんですよね……

今回はにゃーにゃー鳴かせて貰いましたが、英二のネコ語は偶に使うのが萌えなのです(`・ω・´)キリッ

ギャップですよ、ギャップ!!!
ほいほーいヾ(´ω`*)ノシ←←


そしてこの風邪ネタは自分がなってしまったので、英二に風邪になってもらおうと思って書いたモノなんです(笑)


話の内容は自分と同じです。
もちろん咳の所です、はい


英二にやらせたらいいんじゃないかなと妄想しながら、なんとか書き終わりました(^_^;)

英二は風邪にしといたんですけど、自分はインフルなので……
英二にインフルはよくない!!と思って風邪に変更したのです。



しかしなんと言いますか……



リョーマじゃない(°□°)


いや、自分の中ではこれがリョーマ何です。
リョ菊にするとこんなリョーマさんになるんですよ。
不思議ですねー←


因みに自分の所の魔王(不二)は英二の保護者で腹黒の変態です。
英二が欲しかったらまずはこの僕を倒してからだよ…??
みたいな感じです^p^


リョーマさん頑張って!!(笑)


ではでは!!
お読みになって下さり、ありがとうございました!!!!!!!!!ノシノシ

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