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色のない世界から救ったのは…4【シゲサト】






あれからオレは博士とママの所に戻った。



当然、オレ1人だけで戻ってきた事を疑問に思う2人はシゲルのことを聞いてきた。

オレは「ちょっとケンカしちゃった」と苦笑する。
色々と聞かれると嫌だったから「じぶんのせいだから、シゲルはおこらないで」と2人に言っといた。



そうすればオレとシゲルだけで仲直りすると思い、黙って見守っててくれると予想した。




「サトシ」





ママがオレのことを呼ぶと、優しくギュッと抱き締め、頭を撫でてくれた。
ママの優しいその温もりにオレは、甘えるようにギュッと抱きついた。




本当はシゲルと関わるなら、笑顔を絶対に見せるようにしないなと思っていた。








でもまさか昨日、博士の孫に会うなんて思いもしなかった。


それに苛められているところを見られるなんてオレにとっては最悪の出来事だった。
だけど昨日の様子からしてシゲルは勘違いをしているみたいで、何気なくオレが昨日の事を振ってみたらオレが二人以上いると思われていたらしい。






それを聞いたオレは、見た目で判断されたんだと思った。


博士の裏庭にある所でも、オレは明るく振舞ってようと思っていたけどやめた。



もう嫌われよう。


やっぱりあいつらと同じなんだ。






いや、あいつらと同じじゃないけど似たようなものかな……







だってシゲルはオレと同じで中身を見てもらっていないから。
見た目で判断され、ちやほやされているだけ。





オレと同じかなと思ったけど、シゲルもあいつらと同じ中身は見ずに勝手に誤解をしていた。





だからママと博士以外の人は嫌い。





ポケモンとママ達がいればいい。













でも………



何処か心臓が痛かった。





苛められている時に出来る怪我の痛み以上に…………




すごく……痛かった------














***




あれからオレはシゲルとは関わらない様にいつも通りに森の中で遊んでいた。
ここにはオレの傍にいてくれるポケモン達がいるから……

だけどポッポやキャタピー、コラッタといつも通りのポケモン達がいたがピカチュウの姿はなかった。



「ピカチュウ……?」



心臓が早くなる気がした。

ドクン…ドクン…と、心臓の音がすごく聞こえる。
オレは考えるより先に体が動いていた。
怪我をした所がズキズキと痛むけどそんなことは気にしなかった。


すると上からバタフリーが降りてきて慌てた様子だった。
後ろから付いてきたポッポ達も何かを察知をしたのか、オレより先に行ってしまった。



「バタフリー?どうしたの……?」



『フリィ!!フリィィン!』













ピカチュウがケガをしている----














「っ!!つれてって!バタフリー!!!」


『フリィ!!』


バタフリーが案内をし、オレは必死に走って後を追っていった。



なんで?


なんでピカチュウが怪我を??

あいつはそんな怪我するような奴じゃない。


じゃあなんで怪我を??




頭の中がぐるぐるとする中、バタフリーと一緒に森を抜けた。


そこは、オレと野生のポケモン達とよく遊ぶ川だった。

その川は森を知り尽くしていないと辿り着けない場所。
自然で生まれた川だから透き通って見えるほどの綺麗な川。



オレとポケモン達しか知らない場所。



でもそこには苛めている奴らと威嚇をしているポッポ達とボロボロ姿のピカチュウがいた。







なんであいつらがここの場所にいるのか。



ズキズキと頭に何かを叩かれた痛みが走るが、オレは威嚇するポッポ達の鳴き声で我に返った。




「ピカチュウになにをしたんだっ!!」




囲まれているピカチュウの元に向かって走り出し、輪の中へと無理矢理入り込む。
すぐにピカチュウの容態を見ると木の枝で傷つけられたと思われる切り傷、石ころで当てられたと思う怪我など目に入った。
オレはピカチュウを抱き抱えて手当てしようとしたが、苛めのリーダーがオレの髪を引っ張って引き剥がした。
横に倒れる形になってオレはまた新しい傷を作る。
地面が石ころだったから肌にめり込んだり、ゴツゴツした石が肌に擦り、傷口が開いたりしてしまった。


痛む衝動に駆られながらも、オレは初めて苛めている奴らを睨んだ。



初めてオレが反抗したからなのか、ちょっと怯えた様子だったがすぐに悪い顔をした。
バタフリーがオレの側まで来ると威嚇をし、ポッポ達もオレを守るようにして威嚇をした。



ポケモン達は今にでも攻撃をしてもおかしくなかった。
たぶん、オレ以上の怪我を負わせる可能性も十分あった。




別にあいつらが怪我をすればいい---と心の中で思った。




今までにどれだけ怪我したのか



今までにどれだけ傷ついたのか



今までにどれだけ苦しんだのか-----







思い知ればいいと思っていた。




「バタフリー、ポッポ、コラッタ、キャタピー……」



オレが声をかければみんなは『いつでもいいよ……!』と振り返った。
その気持ちが嬉しくて、くすぐったくて、暖かい気持ちになった。




でも……










「絶対に攻撃しちゃダメだからな」









その言葉を聞いたみんなは驚いていた。


『なんで?』と


『どうして?』と




オレはただ首を横に振ることしか出来なくて無言で、痛む体を起こし立ち上がる。




だってさ……


怪我をするのって痛いんだよ??


心臓がギューッて締め付けられる感じで、すごく痛いんだよ?





それにみんながオレやピカチュウの為にやったら、あいつら何をしてくるのか分からないんだよ?




オレはそれが一番…---怖い









オレが思っていることが分かったのか、ポッポ達はオレの後ろへと下がった。
でもその場から離れずにオレの側にいてくれた。



「ピカチュウをかえせっ」




静かに睨むと、あいつらはニヤニヤと笑ってるだけだった。
すると1人の男の子がピカチュウを掴むと見せびらかすように、ぶらぶらと揺らした。

ピカチュウは気絶しているから何も反応はない。



「これをかえしてほしいの?」


「らんぼうにするなっ!!」


「オレたちにそんなこと言ってもいーのかなー?」


リーダーが男の子からピカチュウを受け取ると、リーダーはオレのことを見てニヤリと笑った。
オレはその嫌な笑いを見て何するのかをすぐに分かった。




「やめろっ!」



「あれ、わかったの?オレがピカチュウのしっぽをひっぱろうとしたの」



オレをからかうのが楽しかったみたいで「バカだなー」と笑った。
あいつらが笑う中、オレは早くピカチュウを助けたくてどうすればいいのかと考えていた。


動けば脅される。



動かなければバカにされる。





何も出来ない自分が嫌で、嫌いになる。



「サトシー、ピカチュウ……かえしてほしい?」


リーダーのその言葉でオレは顔を上げた。
静かに頷くと、リーダーは楽しそうに笑って「こいつにかてたらいいよ」と、ポケットからモンスターボールを取り出した。

まだ持ってはいけないモンスターボールをなんであいつが持ってるんだと疑問に思いながら、リーダーはモンスターボールからポケモンを出した。



そこに現れたのはアーボックだ。
そしてそのアーボックは博士の研究で調べているポケモンだとすぐに分かった。


「なんではかせのモンスターボールを……」



「シゲルの家に行ったときにかしてもらったんだー、このアーボック」



自慢する様に話せば、リーダーはアーボックに触った。



「サトシがこのアーボックをたおしたらピカチュウを返してあげるよ」



ニヤニヤと笑うリーダーの顔は本当に楽しそうで、なんでこんな奴がいるんだろうと思った。







でもそれは一瞬で、オレはアーボックの様子がおかしいとすぐに分かった。


アーボックに触れているリーダーが気に食わないらしく、アーボックは怒っていた。
まだ攻撃する様子はないが、たぶん逆らってリーダーを襲うに違いない。



「アーボック」


オレがアーボックに話しかければ何回かしか会っていないが、オレのことを覚えていたらしくて視線をオレに向ける。



「ごめんな、へんなところに出しておこってるだろ?あいつのことはいいからそのままはかせのところにもどっ……「またポケモンとおしゃべりか!??」


リーダーを無視っているのが腹に立ったみたいで、オレの会話を邪魔される。



「アーボックも何おとなしくしてるんだよ!あいつをしめつけろっ!!」



自分のことをいうことをきかないアーボックに怒り、体を叩いた。
するとアーボックは怒りが頂点に達し、尻尾でリーダーをはたき倒した。
ピカチュウは無造作に空に放り投げられ、それをバタフリーがキャッチをして無事だった。


だが、リーダーやその周りにいるあいつらは暴れるアーボックに追われていた。
リーダーはさっきアーボックの尻尾で食らったおかげで、走るのが遅い。
周りは助けようとしないで、早くここから逃げたくて仲のいいと思っていた苛めグループは散らばった。


リーダーは必死になってみんなを追いかけるが怪我が痛むらしく、倒れ込んでしまった。



「い、いやだあぁああぁぁあ!ママあぁああぁぁああぁああぁぁあ」



泣き叫んで助けを求めても誰も助けてはくれない。






「……ざまあみろ」








言葉では皮肉たっぷり込めて言ったが、心の中ではリーダーの心配をしていた。


だってリーダーが食らったアーボックの尻尾はすごく痛いって知っているから。
痛みを知っているのはオレが一番知っている……



するとアーボックは口を大きく開いて、牙が紫に変わっていくとポタポタと紫の雫が落ちていった。



「あれは…どくどくのキバ……っ」



アーボックは怒りで我を忘れていた。




ものすごい勢いでリーダーに襲っていく。











悲鳴の声



「助けて」と求める声









そしてポケモン達の叫び声――――――――

























































オレはいつの間にか水の中へいた。




右肩がズキズキと痛み、体の中がすごく熱くて体が痺れて動けない。





すると体から何か込み上げてきて、口から空気と赤い液体を吐いた。









空気はきれいな泡となって上へと上がっていき、オレの体は川の流れによって流されていく。






何処に流れて行っちゃうんだろうな、なんて思いながら目が開かなくなってきてゆっくりと瞼をおとしていく。
















最後に映ったのは……













































誰かがオレに差し伸べる手だった--------







――――――――――――――――――――――――――――――
*あとがき*
ポケモンはもちろん第一に考えてるけど、どんなことがあっても相手に怪我はさせない性格だと思います。
怪我をしたら痛い、でも一番痛いのは心、みたいな
もう抱きしめてあげたいです、はい

シゲサトにどっぷりです←



ではでは!
お読みになって下さりありがとうございました!!!ノシノシ

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あきゅろす。
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