数学







「数学なんて、普段の生活から言ったら値段の計算ができればそれで事足りるんだよ。だから比例反比例とかなに?それをいつ使うわけ?もっと言うなら図形の証明。合同だって説明してどうすんのあれ。それで私達の生活が一滴でも潤うの?というわけで跡部君私にチュッパを贈呈しなさい」

「意味がわからねぇよ」



跡部は的確で無駄のないつっこみをいれながらも、チュッパの袋を丁寧にはずしてみょうじの口にいれてやった。
てかこの子あめ入れてもらうの口パッカー開けて待っとるってどんだけなんや。相手はあの跡部やで?この前までの敵対心はどこいった。まあええけど。



「つまりさあ、学生なら誰もが一度必ず思うであろうことを私が言ってあげたってことなんですよ。チュッパはそのお礼」

「だからそれが今この状態となんの関係があるんだよ」

「要するに、数学なんて無意味やからこんな宿題やりとうないーっちゅーことやろ?」

「さっすが忍足わかってるねー」

「……………」



今は昼休み。次の時間が数学のため、跡部とみょうじと俺で宿題の見せあいっこ中。ちなみにテニス部の部室でやってます。
なんでかっていうと、まあ周りの目がうざったいからやな。跡部はよく部室来て息抜きしとるんやけど、ここに部外者を入れたことはない。
……ってみょうじ入っとるやん。え、初のイレギュラーこの子?うわ―。



「大体、お前何で今の段階で宿題終わってね―んだよ。バカなのか?」

「あのねー別にわかんない訳じゃあないんだよ?ただほら、めんどくせえめんどくせえと思ってたらどんどん後回しに…」

「そんで結局やらずに学校来るのはどうかと思うけどな」

「よくあることです」

「それこそダメやろ。ほら、しゃべってないでさっさとやりい」

「うへーい………」



文句たれながらも手は動いとるところを見ると、わからない訳じゃないっちゅーのは本当らしい。
…そんならマジでめんどくさがっとんの?たった2ページなんやけど。



「たいちょうかく……って漢字どう書くんだっけ」

「はっ」

「は、鼻で笑いやがったああああ!私漢字苦手なの!」

「なに、そんならお前理系?」

「やー多分文系。国語のが得意、てか好きだからね。漢字は嫌いだけど」

「なんともみょうじらしい答えやな」

「おい、ここの答え間違ってるぞ……ってお前これ……」

「うそ、どこ違う?」

「……お前、10―4もできねえのか……」

「ええ、あ、うわ―。みょうじ、これはヤバいやろ。10―4が5になっとるで」

「………あは、わざとわざと」

「「はあ………」」



二人同時にため息をつかれ流石に焦ったのか、みょうじは問題集を抱えこんでやっと真面目にやりはじめた。
縮こまって手をこまこまやっとる姿は、なかなかかわいい。



「いっつもああならウチで飼いたいぐらいやわ」

「……忍足、お前そういう趣味だったの」「ちゃうちゃうちゃう例えばの話!!」「例えばでもキモい」

「うおっびっくりした!忍足いきなりおっきな声ださないでよ―」

「す、すまん」

「だっせ」

「(跡部のヤロオ調子のりやがって…!)」



つーんとそっぽを向いていた跡部は、急ににやっと笑いおった。悪代官も真っ青な悪役顔や。なんかおかしなこと思いついたな、こいつ。
跡部はニヤニヤしながら、まだ何も気付いていないだろうみょうじの隣に座った。いきなりで少し驚いたのか、みょうじの普段眠たげな目が見開かれる。



「……え、なに、なんかよう?」

「別になんでもねーよ。さっさと進めろ」

「わ、わかったけど………」



隣の跡部を気にしながらも、みょうじは宿題を再開した。あんな近かったら集中できんやろ…。
跡部はというと、こんなの当然とでもいうようにみょうじの頭をなで始めた。うは―みょうじめっちゃ焦っとる。



「ちょお跡部、あんた何考えてんの?」

「お前の髪見た目よりやわらけえな」

「質問に答える気はないんですね…」



みょうじが諦めたのをいいことに、跡部今度は髪で遊びはじめよった。みつあみしたり髪すいたりなんかもうやりたいほうだいやな。
跡部が髪をさわるたびに少し顔を赤くしたみょうじの肩が揺れて、やらしい雰囲気―。



「跡部―、いい加減にしないとさすがに怒るよ―?」

「はあ?俺様からこんなことしてやるなんて滅多にないんだ、ありがたく思えよ」



普通の、一般的な氷帝女子なら、跡部が隣に座っただけで発狂もんや。比喩とかじゃなくて、これ本気。跡部もそれがわかっててみょうじにこんなことしとるんやろうな。
一般的からは到底外れとるみょうじに媚びを売ったらどうなるか、好奇心からのイタズラ。まあ結果はある程度わかっとるけど、



「ふざけるなよーいつもの跡部じゃないぞお前!ほら見ておっしー、とりはだとりはだ!」

「なっ……!」

「ぶはっ!わ、お前最高!想像以上!!」

「は?え、なんのこと?」

「あっははははは!うわーマジで鳥肌たっとるこの子!跡部形無しかっこわるー!!」

「て、てめえら………」

「ぎゃはははは!ぐふっ、こ、このネタで3日は笑えるでーー!」

「えーちょっと意味分かんないんだけど!忍足あんたなんでそんな笑ってんの?!おーしーえーろーよー!」

「っもうこっからでてけーー!!」

「ええなんでー?!」



結局この後、拗ねた跡部にみょうじと部室から追い出された。
でもその後すぐにチャイムが鳴ったから、やっぱり跡部も一緒に3人で教室に帰ったんやけどな。
うわでも跡部アホやったなー。みょうじはやっぱリアクションが読めん!結局なんで俺が笑っとんのか納得いってへんみたいやったし、いやーおもしろいヤツ!





……ああでも、なんかちょっとイラッとしたのはなんでやろ。






*跡部の行動はいつも唐突。






[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!