隣の彼は
リンクマン
「おや、あなたは跡部君と知り合いなんですか?」
「こんなヤツ知りませーん。……ってあれ、跡部ってどこかで………」
「跡部景吾君です。さっき生徒会長の演説してましたよ」
「私演説とか聞いてな」「本人の前でいい度胸じゃねーか」「あははですよねー」
思い出した、思い出したぞ跡部景吾…!あの跡部グループの御曹司じゃねえか何私そいつにケンカ売ってんの!うちのお得意さんじゃんやっべーおじさんに殺されるううう。
「ケンカは私のいない所で思う存分やってください。ほら、時間押してるので適当に自己紹介してくださいよ」
うっはーやばい!と思ったのでちょっとだんまりしながら美形……じゃなくて跡部か。跡部を睨んでいたら、原先生に頭をペチンとたたかれた。先生、発言に少し問題があった気がするのは気のせいですか、そうですか。
「じゃあみょうじさん」
「……うへい、わかりましたあー。あー、えーと、名前はーみょうじなまえといいます。趣味は、んー、節約?うんそうだ節約。んと、それで特技はバーベキュー、好きな物はひかげでー嫌いな物はひなたです。これからよろしくお願いされてくださーい」
なんて言おうか全く考えてなかったけど、うん、なかなか私らしい自己紹介だったぞ。でもなんでだろ、拍手がないー。
「みょうじさん…」
隣を向くと、先生が頭をおさえてため息をついた。なんでだ。
「先生私ちょうまじめに自己紹介したのに何ですかこの空気」
「あなたのそれがちょうまじめだというのが問題ですね…。それより特技がバーベキューって………」
「バーベキュー得意ですよバーベキュー。やろうと思えばどこでもあっという間にバーベキューできます」
「そうですか…。ではまたバーベキューしてください家で」
「今言外に帰れと言いましたね先生。いいんですか帰っちゃいますよー。転校初日10分で帰ることになりますよー」
「別にいいですけどクラスでの印象は最悪ですね」
「(別にいいんだ………)」
「ああでも今の時点で最悪でしょうから全然大丈夫ですね」
「えええええ」
「ぶふっ!」
あれ今明らかにだれかふきだした音がしたよな。うわーなんかクツクツ笑う声も聞こえてくるぞ。
「忍足君…。なに笑ってるんですか」
「あ、す、すまん先生っ……完全にっ、つぼってもうた……!」
どうやらふきだしたのは忍足君という男子生徒らしい。特筆すべき点、めがね、長髪、関西弁。わーすっごいうけてる。
でも私に言わせてもらえば君のめがねのほうがよっぽどか爆笑もんだよ。今時丸めがねって、ええー。それより私の席はどこだ。
「先生先生」
「なんですか」
「私の席ってどこになるっぽいですか」
「……ああ。そうですねー、じゃあ適当に…」
決めてなかったのかこの人。しかも適当かよ。
「最初は跡部君の隣でいいかと思っていたんですけど、なんか仲悪いみたいですし。では、忍足君!」
けほけほせきこみながら手を挙げたさっきの忍足君。まだ笑ってるのか。どこにそんな笑う要素があったんだ?
「忍足君の隣、いませんね?」
「おーおー、みょうじさん大歓迎!ここおいで!」
「…ということなので、あなたの席は彼の隣で」
「了解しましたー」
今日は入学式だけだしいいやー、と思って何も持ってこなかったので、手のやり場とまわりからの視線に困りながら席へ進んだ。なんか痛い、視線。
忍足君の席は一番後ろのなかなかいい場所にあって、あそこなら授業中寝れる。やったねラッキー!
途中、跡部の横を通った。そうしたら目があったとたん、ぷいってされちゃったぞ。こっちもぷいってしたろうかと思ったけれど、あれは美人がやるから効果があるんだと思い直してやめた。跡部は腐っても美形で腐っても御曹司。おんぞうしおんぞうし……うわでもうっぜー。
忍足君は私が隣へ行く間、ずっとヘラヘラしてた。さっきは本気で笑ってたみたいだけど、今の笑顔はちょっと嘘くささがました。気がする。うーん、さては食えないヤツだな?コイツ。
「これからよろしゅう、みょうじサン」
「サンづけがとんでもなくよそよそしいから呼び捨てでいいよ、忍足君」
「おっホンマ?んじゃみょうじも俺のこと忍足でええよ」
「あ、そうなのじゃあ忍足1年間ヨロシクー」
「いきなりええ加減になったな」
「心を開いたといっておくれよ。あのね忍足、なんだか私このクラスでうきそうなので君におもり役を頼もうと思うよ」
「お前今のままいくとこのクラスだけやのうて氷帝自体からもうくで」
「ええどうしてー!他のクラスではいいこするし!」
「まず跡部にケンカ売った時点で仕舞いやな」
「…………あー」
「それにみょうじ跡部に物投げたやろ?やばいで」
「あれ、あんた投げたこと知ってんの?」
「みょうじが跡部にクリーンヒットかましてからな、アイツほっぺ赤いのなかなか治らんくって、部活中めっちゃきげん悪かってん」
「うわあどうしよ……って忍足と跡部おんなじ部活?」
「おー、テニス部」
「へええ、テニス部なんだあ。わたしゃてっきり演劇とかそんなんかと」
「あー、まあ確かににあうな、跡部」
「忍足はあれ、自然科学部とかそんなん」
「お前の中の俺どんなんやねん」
「まあはじめましてだし」
「それもそうやな」
忍足とは気が合いそうです。
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