崩れた



今は人生で一番幸せな時なんじゃないかとも思えるような中学二年生の夏休み。あー幸せだ。
なにより面倒な学校に毎日毎日朝起きて行かなくてもいいっていうのが一番だ、ホント。
だからさ、こうやって幸せムードを四方八方にまき散らしてるときにああいう知らせがくるのはマジメに勘弁してほしいんだよねー。




8月25日午前6時30分、私宛に悪魔の小包が届きました。











ピーンポーン、と限りなく軽い音が我が家に響く。現在時刻は午前6時30分。
・・・世の中夏休み一色なのに何故こんなにはやく起こされなきゃいかん!とかうだうだと考えながら、私は不機嫌オーラ全開のまま玄関を開けた。



「・・・どちら様ですか・・・?」

「クロ○コヤマトの宅急便でーす。ハンコお願いしまーす!」



扉を開ければ、世間でお馴染みクロネコヤ○トの宅配員さんが小さな小包を持ち、営業スマイルプライスレスな表情でお出迎えしてくれた。
あれ、この場合はお出迎えしなくちゃならないのは私のほうか。だめじゃん。



「ここでいいですか」

「ばっちりです!ありがとうございましたー!」



適当に貼られていた伝票に向きもなにも考えずにハンコを押し、小包を受け取る。持った感じからして中身は何かの書類だろう。
明るい雰囲気を残して去っていく宅配員さんの後ろ姿が見えなくなるまで見送って、私は開け放っていた扉を閉めた。そして、小包の宛名を確認する。
見れば、確かにここの住所と私の名前が表記されていた。その事実にあれ、と首を傾げる。自分こんなもん頼んでたっけ?
でも確かに住所名前一致してるし・・・と思いながら小包をひっくり返すと、無駄な達筆で男の名前が書いてあった。その名前が私の嫌いな名前だったので、ちえーと思いながらもリビングに向かう。
私の朝にめっぽう弱い頭はまだ覚醒しきってないのか、途中いろんな場所にぶつかった。いてえ。

なんとかリビングにたどり着き(っていってもそんなに距離はないんだけど)(どうせ貧乏人の暮らす家さ!)その辺にあったパンを適当につまみながら小包を開ける。
綺麗に開けるのが面倒だったので、鋏を突き刺してびりびりと袋を破った。



「ん・・・?」



出てきたのは素っ気ない手紙に、ばかでかい校舎が写った学校のパンフレットらしきもの。




まさか。




小包に入っていたものの内容と送り主の名前から大体のことを悟った私は、自分でも分かるくらいに青ざめた。うっそだろおい、まだ今の学校一年しか行ってないぞ。
もしかしたら違うかもしれない、そんな儚い希望を胸に、急いで折りたたまれていた手紙を広げ、読んで、・・・・・・・・・・・・・・・・・・絶句した。ビンゴだ・・・・・・。
唇をわなわなと震わせながら、手紙の内容を確かめる様にゆっくりと朗読する。



「今通っている中学は止めた。これからは・・・・・・・・・これからは、同封したパンフレットの学校に通え、だと・・・?」





チュン、チュン、と鳥の鳴く声がする。朝日はもう高く昇り、今日も暑くなるだろう。
そんな夏真っ盛りの気候を全身で感じながらも、私には酷い悪寒しか頭に無い。
呆然としながら手紙を机に置き、パンフレットを手に取った。最初見たときと同じ、ばかでかい校舎。





パンフレットにはでかでかと、『氷帝学園』の文字が、躍っていた。






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あきゅろす。
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