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諦めようとしてるのに(ひか←くら)


誰かに恋してるときって、なんやいきなしすき!っちゅー気持ちが溢れて胸痛くなるーみたいなこと、ない?あるやろ?特になにがあったわけやのうても、唐突に。授業中とか、筋トレの途中に一息ついたときとか。

ほんでいまの俺がそう。窓際の俺の席は授業中物思いにふけるのには最高の立地で、頬杖ついてグラウンド眺めてるうちにもーめっちゃ心臓いたなってきた。あかん泣きそう。

(…財前、いまなにしとんのかなー)

やって俺の恋はきっと叶わないから。如何に俺が綺麗な顔しとっても、俺が恋してやまない財前は立派な男だ。俺も男。気持ち悪い、て思われるに決まっとるし、告白する気はない。でもすき。こんなに人をすきになるんは初めてやったし、言わへんからって気持ちを殺すんはやめた。俺は財前がすき。そこで止めればええねん。

(まあそう決めてもつらいもんはつらいねんけどなー)

最初はただの後輩としてすきやった。俺は後輩に好かれやすい男やって自負があって、だからこそ簡単になつかへんかった財前が気になった。構いに構い倒して、最終的にちょっと笑って「部長には敵いませんわぁ」って言った財前の顔はいまでも憶えとる。忘れられるわけがない、あのとき俺は財前に惚れたんやもん。

「白石さん、白石さん」
(あんときの財前、めっちゃかっこよかったなー……)
「…謙也さん、これどないしたんですか」
「なんやさっきの授業中からずっとこんなんやねん…」
「しーらーいーしーさーん」
(うわ……あかんわなんや財前の声聴こえるやん!俺もヤキまわったなー)
「コラ白石!目え開けたまま寝とんやないで!」
「あだっ」
「…………」
「なんやなにすんねんアホンダラ……あれ?ざ、ざいぜん?おったん?!」

いきなし頭殴られて怒鳴りながら振り向いたら、俺を殴ったらしい謙也と、ちょっと呆れた顔をした財前がいた。なんや幻聴やなかったんかいな……口に出さんといてよかった。

「なにおまえぼさっとしてんねん」
「えー、ごめん……考え事してんねんか。もしかして財前呼んでた?なんや用事?」
「はい。今日委員会あって部活多分間に合わへんから、遅刻していきます」
「…あ、そーなん……」

あまりにも事務的な連絡に、自然と声のトーンが落ちてしまった。それに、部活はじめるまえの少しの時間、部室で財前(とその他の有像無像)と話すん、地味に楽しかってんけどなー……ちゅーか、かなり楽しみにしててんけどなー………まあ委員会っちゅーならしゃーない。わざわざ報告に来たんやし(それが当たり前なんやで、やねんけど、こいつは最初無断遅刻欠席常習やったから、これはかなりの進歩や)なんか言うて教室帰るタイミング与えてやらんと。

「まあ報告ちゃんと来たしな、うん、わかった。なるべくはよおいでな」

にっこり笑って言うと、財前はいつもの無表情で俺の顔をみつめてから、くっと口を歪めて笑った。あかんびっくりした!めっちゃかっこいい!感情を表に出さんまま大混乱してると、

「そんな寂しそうな顔せんとって下さいよ…なるべく早く行きますよって」

財前はそう言って俺の頭をぽんぽん、と叩いてから教室を出ていった。なん、え、なんやねんそれ……!あまりのことにフリーズしてると、横で謙也が「あいつもまるなったなー」なんて暢気に笑った。そ、そか、あれはギャグやんな、ネタやんな、冗談やんな……っていくら言い聞かせても心臓の鼓動は収まらんし胸の痛みもやまない。財前の手の感触も消えない。あかん泣きそうや。やって、あんな、あんな笑顔、あんなやりとり、

「恋人どーしみたいやん……っ」
「は?!白石?なに、どしたん、なに泣いとんの、ええ?!」



慌てふためいて背中をさすってくれる謙也には話さなあかんかなー、仲ええし目のまえで泣いてもうたしなー、とかぼんやり考えた。涙はまだ止まらない。



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