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文字通り死ぬ程あいしてる(じろひよ)


俺は正直他人に触られんのが結構かなり大分苦手ってゆーか嫌いだ。だけど日吉、俺が部活中寝てると起こしに来てくれる、俺の前髪をかきあげて額を撫でて起こしてくれる日吉、の手、はすごくさらさらしててひんやりしてて、いつも気持ちよかった。それがはじまりだ。冷えた手の感触に薄く目を開けた瞬間、いつも必ず少し驚いてから目を細めてはにかむ日吉がだいすきだった。何回俺を起こしに来ても、俺が起きることに驚く日吉がすきだった。


でもそんなあまやかな日々は中学で終わって、何故かって日吉は高校ではテニスをやめたのだった。家の手伝いで手一杯になりそうなので、と説明した日吉にみんなが反対した。鳳なんか泣いてた。でも日吉は毅然とした態度で退部届を出した。ロッカーを片付ける日吉と部室で二人きりになったとき、言うつもりなかったのに、「もう日吉に起こされなくなんだね」って言っちゃって、日吉はびっくりした顔で俺をみた。ぜってーヒかれる、と思ったけど、日吉は薄く笑って「他のやつは俺程うまく芥川さんをみつけられないでしょうから、これからはたくさん寝れますよ」と言った。あんまり悲しそうに笑うので思わず頭を撫でた。日吉はうっとりと目を伏せて、俺、テニスすきでした、と言った。「いつでも遊びに来なよ。打ち合いっこしよ」と言って笑うと日吉は目をあげて、いつの間にか日吉の頬に移動していた俺の右手に左手を重ねて頷いた。

「……日吉、あんまりかわいいことしないで?どうせばれてるだろーから言うけど、俺日吉のことすきなの」「がんばってかわいくしてるんですよ」そう言って日吉が笑ったのでむしゃくしゃしてキスした。嫌がらせのつもりで。ら、酷く顔をしかめて、こんな気持ちのないキスしないで下さいと言ったのでびっくりした。は?とか間抜けな声が出た。日吉は無言で俺をじっとみて、「芥川さん、俺のことすき?」と言った。「ずっとすきだった」「…はい。知ってました」そう言って日吉は俺にキスした。俺の首に腕を回して、至近距離でみつめあって、俺の唇に指を這わして、「…俺の気持ち、わかりました?」これで落ちないやつがいたら会ってみたい。


俺と日吉はわりと体で繋がっている。決してネガティブな、カラダだけのカンケイ、みたいな意味じゃなくて、すき→すき→すき→セックス、みたいな感じ。すき!って伝えたくて触りたくて触ってたらセックス。そんな感じ。だから俺達のセックスは大分なまぬるいと思う。互いに、最高にあまやかしたいし最高にやさしくしたいと思ってるから。その証拠に、日吉はセックスしてる間ずっと笑ってる。いとしい。だけじゃなく、日吉は普段から結構笑う。でも、「(俺)日吉って意外に笑うよね〜」「(がっくんなど)は?どこが?」ってなる。俺しか知らないのかな?だとしたら死ぬ程うれしい。

「ねーひよ、ひよって別に無表情じゃないよね。にこにこしてるよね」「そうみえます?」日吉はことんと首をかしげた。ひとつのベッドを他人と共有するのがこんなにしあわせだなんて、俺は日吉に会うまで知らなかった。「うん!だってホラ、中学んとき、俺のこと起こしにきたときとか」「はい」「憶えてる?ひよさ、毎回必ずさ、俺の前髪さらってして、おでこ撫でて、」「ああ、はい」「そいで俺が起きると、あ 起きた、って感じにちょっと目えおっきくなって、そのあとふわって、」「笑ってました?」「笑ってた。ちょう綺麗だった……俺あの頃からひよのことすき」「……奇遇ですね」日吉はまたにこっと笑った。そしてあの頃みたいに俺の前髪をさらってかきあげて額を撫でて、俺のだいすきなあの笑顔で、「俺も、あの頃からジローさんが………芥川さんが、すきでした」いまの、当時より少し近付いた呼び方からあえてあの頃の、堅苦しい呼び名に変えてそう言った。「ひよ……」「……なまえ、呼んで」「っ…わか、し、」「…ジローさん、俺、笑わないです」「は?」「他人に笑ってみせるの、嫌いなんです。どこか弱さを晒してるみたいで」「そなの…」「ジローさんだからですよ」「………」「…すきな人には、すかれたいでしょ」「わかし……」こうなってくるとどんな言葉も足りなくて、俺はもう日吉に口づけることしか出来なかった。このいとしさはどこからくるんだろう。俺は冷たい人間だ。自覚はある。だけど日吉に対する思いには際限がなくて、会う度、話す度、抱き合う度、キスする度、セックスする度日吉への愛は深まった。日吉もそうだといい。毎日毎日俺への愛に怯えればいい。俺もそうだから。


「わかし、すき、だいすき、あいしてる、いちばん」「俺も、ジローさんがいちばんすきです」「わかし、本当にすきなの、ねえ俺から一生離れないで、わかし、お願い、」「ジローさんがいいなら、ずっといます、ずっと一緒にいたい、俺も」




いくら抱き合っても足りない。
だから、
早く溶け合う日がくればいい。



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