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非現実的な話(やぎゅ♀にお/高校生)


仁王くんが女の子です。
わりと下品。


久々に仁王さんと過ごす夜、私達はひとつのベッドを共有していました(帰り際、「うち、今日、だれもおらんのやけど…」と頬を染めた仁王さんに言われました。あまりのベタさに笑いを堪えるのに必死だったのは内緒です)。身体を重ねても少しの微睡みの後帰宅するのが常でしたから、この柔らかな温もりを抱きしめて眠れることが酷くしあわせに感じられます。と、私の肩に額をすりよせていた仁王さんが、かりかりと私の背中をひっかきました。

「仁王さん…?」
「…柳生さんてさあ」
「はい」
「俺がどんなに「そのままでよか」とか「中で出して」っちゅーてもしてくれんよね、中で」
「…っ、あ、当たり前じゃないですか!」

こんなにあまくかつ気だるい空気の中で口にするには余りにえげつない仁王さんの言葉に、私は心底驚き、思わず仁王さんの肩を掴んで少し距離を取ってしまいました。仁王さんはますますむっとして、私の手を振り払い、首に手を絡めたかと思うと、咎めるように私の耳に噛みつきました。痛い!

「いっ……仁王さん!」
「ぎゅってしとらん柳生が悪い」
「……すみません」

かわいらしい我が侭に自然と笑みが零れます。手をしなやかな腰に滑らせて引き寄せると、仁王さんの表情も柔らかくなりました。しかしすぐ口元を引き締めて、話戻すけど、と強い口調で言いはじめます。

「なして?俺が頼んどるんに」
「いやなしてもなにも、もし妊娠してしまったらどうするんですか」

射精するまえの先走りにも精子が含まれているんですよ、と告げると、仁王さんは目を見開いて、それは知らんかったのう、と呟きました。

「やー、今までできなくてよかったなー」
「……私以外の人と生でしたことがあるんですか?」
「………柳生さんに会うまえじゃもん」
「…まあ過去をどうこう言っても仕方ありませんね」
「ねえでも普通はさ、女にそげなこと言われたら、こう、燃えたり、みたいな…せん?」
「昔の相手はそうだったんですか?」
「…………………」

仁王さんは少しの間黙って、こくりと小さく頷きました。予想していたとはいえ、思わずため息をつくと、ばっと顔をあげて、

「ちが、違うんよ…!柳生さんは、そうやなくて、」
「…大丈夫ですよ。わかってます」
「ええから言わして……あんな、俺柳生さんの子供欲しいんよ」
「……………は?」
「昔付き合ってた人とかにもそうゆうこと言うときあったけど。でもそれは違うんよ、俺なんかの言うことに振り回されとる相手がおかしくて…ばかにしてて」
「にお、さん……」
「軽蔑した?まあするよなあ、うん、でもこれだけは信じて欲しいんじゃけど、柳生さんことは本当にすきなの。すきで、だから、柳生さんの子供、欲しいん」

仁王さんは笑おうとして失敗しながら泣いていました。震える手で私の肌に触れ、いつ拒否されるかと恐れているような動きでうつむきました。私の手もまた震えていました。それは恐れや嫌悪からのものではありません。私はかつてない程腹を立てていました。

「……貴方、ばかですか」
「、柳生、」
「なにがおかしくて、ばかにしてて、ですか!それで、…そんなことで、貴方の身体に傷がついたかも知れないのに!どこの誰とも知れない人間に貴方の膣が犯されたということだけでも我慢ならないのに、」
「…やぎゅう……?」
「過去なんて、どうにもならないってわかってます、でも、どうしてそんな……」
「柳生、ごめん、ごめんね……なあ、泣かんで、柳生さん」

年甲斐もなくぼろぼろと零れる私の涙を、仁王さんは唇で拭ってくれました。涙の跡の残る頬は、ぺろりと舐めてくれました。しかし、こんなに心からあいしている仁王さんがかつて他の男性に蹂躙されたということがあまりに悲しくて、私の涙はとどまることを知りません。尚も目尻に口づけてくれる仁王さんをそっとシーツに沈めると、仁王さんの私を案じる視線が突き刺さりました。そっと口づけると、仁王さんの瞳は嘆願するように細まります。

「…柳生さんの子供、欲しい」
「……どうして子供に固執するんです。私では、足りませんか」
「大丈夫…いまはな。でもきっと、いつか柳生さんは俺から離れるから」
「そんなこと、」
「あるよ。やから、保険。寂しくないように、」
「…私は、」
「……柳生さん?」
「私は、そんなに信用出来ませんか?」

一度は収まりかけた涙がまた溢れました。私の顎を伝い、仁王さんの頬にぱたりと落ちます。

「私、仁王さん以上に大切なものなんて持ってないんです。仁王さんに出会って、仁王さんをすきになった日から、私の全ては仁王さんなんです。仁王さんのためなら、テニスなんていつでもやめられます。仁王さんがやめろと言うなら、医大への進学だってしませんし家も継ぎません。私が仁王さんをすきでいることが許されるならなんだって出来るんです」
「……ほんと?」
「私がいままで貴方に嘘をついたことがありますか」
「…ううん、ない」

仁王さんはしあわせそうに笑いながら私を抱きしめました。ほんならずっと一緒におってもよか?我が侭言ってもよか?会いたいときに会いに来てよか?ずっとすきでおってもよか?立て続けの仁王さんの質問に全てイエスと答えると、仁王さんは声をあげて笑い、あかん俺いまめっちゃしあわせ!と叫びました。

「仁王さん」
「なん?」
「高校卒業したら、もう籍入れちゃいましょうか」
「…まじで?」
「貴方さえよければ」
「…ん。すーげえうれしか…あんがとぉ」
「あ、でも…式もしたいですか?でしたらもう少しあとのほうが、」
「んーん、そんなんどうでもよかよ。柳生さんとずっと一緒におれる確証があったらそれでよか」
「……呼び方も考えなきゃだめですね」
「あ、そか、結婚したら二人とも柳生やもんね。……ね、ひろし」
「!!!!!」
「あははは!柳生顔真っ赤!」
「……犯されたいんですか」
「中に出してな?」
「……それはまだだめです」




そう言ってベッドサイドを探ったら、コンドームはあとひとつしか残っていませんでした。



あきゅろす。
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