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「はい先生」
今度は黒髪長髪の男の子が手をあげた。
何だか真面目そうな感じ。
でも先生は気付いていないのかジャンプを読み続けている。
「はい先生」
「…………」
それでも尚、諦めない長髪くん。
きっと先生は(ジャンプという名の)違う世界にいるから、君の声は聴こえないと思うよ。
「はい先生」
でもめげずにまだ手あげてるよあの人!
しかも軽く涙目だし…先生はやく無視するのやめないと本気で泣きそうだよあの人!
「……………チッ」
先生がものすごく嫌そうな顔をして舌打ちをした瞬間、長髪の彼は机をバンッと叩きつけて勢いよく立ち上がり、叫んだ。
「先生ェェェェェ!!!」
我慢の限界にきてしまったのか彼は血相を変えている。
あんだけ無視されたら誰だってあーなるよね、普通。
今のは絶対先生が悪い!
「先生!何で俺のこと無視するんですか!?」
「だってお前の長髪ウゼーんだもん。さっさとヅラ取れ。もしくは抜け。そーしたらお前に質問権を託す」
「ヅラじゃありません地毛です。いや、桂です」
ヅラじゃないのにカツラ?
「だーもういいよ!勝手に質問でも何でもしてくれ。お前の無駄にサラッサラの長髪マジでウザい」
「な…何でも?//」
「何照れてんだよ!お前美輝の半径1メートル以内に近付いたらヅラ取るからな!」
「ヅラじゃありません地毛です。いや、でも俺は桂…地毛だけど桂。あーもうめんどくせっ」
なんてゆーか…
彼は天然なのかな?
凄い真顔なのにバカにしか見えない。
しかも彼の隣には『エリザベスです。よろしくね』と書かれた板を持った、白いオバQのような変な生き物が立っている。
何あれ?
宇宙人か何か…?
でも、ちょっと可愛い。
無視をするのも何だか悪いので「こちらこそ」と小さく呟いておいた。
すると長髪の彼がコホンッと喉の調子を鳴らし、少し照れながら言った。
「俺の名前は桂小太郎。よろぴく〜。好きなものは、んまい棒。嫌いなものは警察だ。えっとじゃあ俺からの質問は…好きな男性のタイプは何ですか?」
今時、よろぴく!?
てか案外普通の質問なんだ。結構定番だよね。まぁいいけど。
「相手の気持ちをちゃんと考えて行動できる人かな!」
「うむ。参考になった」
そう言って桂くんは満足げに席に座り、それとほぼ同時に先生が続けた。
「よーし、さっさと次にいくぞ、次。質問あるやつ挙手しろ〜」
次は誰だろう?
そんなことを呑気に考えていると後ろの方でスッと手があがった。
「へーい」
あの綺麗な蜂蜜色の髪。
そして大きな瞳。
あれは――…総悟くん!?
「はい、総一郎くん」
「総悟でさァ」
総悟くんは冷静にツッコミを入れてから、ニヤリと口角を少しあげて立ち上がった。
――ゾクッ
(何あのドS顔…)
背筋が凍りそうになった。
私…大丈夫、かな?
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