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いきなり大声を出してダラダラと黒板に文字を書いていく先生。
『大質問タイム』
意味が分からない。
いや意味は分かるけどさ。
ってか私に質問することなんてないでしょ!
「よし脳の弱い美輝が早くお前らの顔と名前を覚えるためにも、軽く自己紹介してから質問しろー。質問ある奴は手あげて勝手に質問しろー」
「脳が弱いって失礼な!私いま地味に傷付きました!」
先生は言い終えると、パイプ椅子にドカッと座って、どこからか取り出したジャンプを読み始めた。
(え…もう放置?)
「じゃあ私からいくネ」
瓶底メガネに赤橙色の髪の可愛らしい女の子が元気に立ち上がった。
「神楽って言うネ。好きなものは酢昆布!嫌いなものはこの小汚い世の中。何で転校して来たアルカ?」
「…きっと、これも小汚い世の中のせいなんだよ」
「ま、まじでか!それは許せないネ。困ったらいつでも私に言うアル。すぐ助けてやるヨ!」
「あ…ありがとう!」
新たな仲間ができました!
次に勢いよく立ったのは、まるでゴリラのような人。
「近藤勲って言います!好きなものは、お、おおおおお妙さ『ボゴッ』…き…嫌いなものは暴力…です。…好きな人はいますか?」
大胆告白をしたと思ったら、話してる途中で隣の綺麗な女の子に殴られた。
殴られた右頬は無残な姿へと変わっている。
そこは赤く腫れ上がり、見るからに痛そう。
「大丈夫…ゴリラくん?」
「勲ォォォ!!」
「やべ 間違った」
「一文字もかすってないからね!ただの見た目でしょ!どうせ俺はケツ毛ボーボーのゴリラ男ですよォォォ!!!」
「ごめんね。全然そんなことないって」
「まぁ分かれば良いの!」
「あ、ちなみに好きな人はいないよ」
「そうか…早く良い人が見つかるといいな!」
笑顔で喋るゴリラくん、じゃなくて勲くん(…やっぱり近藤くんって呼ぼう)の迫力は凄まじかった。
てゆうか、君に心配されたくないんだけど。
君の右頬の方が心配だよ!
「んじゃ次」
瞳孔の開いた鋭い目がちょっと怖い印象の黒髪短髪の男の子。
あっ!あれって、朝の…
「土方くん!?」
「よっ」
私たちの意味深なやり取りにクラスの皆は凄くビックリしている様子。
神楽ちゃんは「秘密の関係アルカ!」とか言っていたけれど、軽くスルーした。
土方くんも3Zだったんだ。
なんか顔見知りがいるだけでちょっと安心だな。
「まぁとりあえず、名前は土方十四郎。好きなものはマヨネーズ。嫌いなものはマヨネーズを侮辱するもの全て。マヨネーズは好きですか?」
「マ……マヨネーズ?」
「あぁ」
「普通に好きだよ!」
「まじでか!よっしゃ」
「あはは」
こいつマヨラーかッ!!
「次は僕から」
眼鏡をかけた特徴の少ない優しそうな男の子。
その…なんてゆーか、
地味系男子?
「志村新八って言います。好きな人はお通ちゃん。それから最近の悩みは眼鏡が僕の主成分になっていることです」
「お通ちゃんって、もしかしてあのアイドルの?」
「知ってるんですかっ?」
急にパァッと明るくなる眼鏡くん。あれ…名前何だったっけ?
「お通ちゃん可愛いよね」
「お通ちゃんの良さが分かるなんて!美輝さん、あなたは最高ですね!」
「それほどでも〜」
「あ、それで、お通ちゃんは好きですか?」
「好きだよ」
「ありがとうございますっ」
なぜかお礼を言われちゃいました。うーん…軽くオタクなのかな?
「志村妙です。妙ちゃんって呼んでね。好きなことは料理で、嫌いなものはゴリラ・ストーカー・変人…(中略)です」
「私のことも美輝でも何でも好きなように呼んでね、妙ちゃん」
さっき近藤くんを殴った綺麗な女の子だ。
妙ちゃん、相当近藤くんのこと嫌いなんだなぁ。
しかもストーカーって…近藤くん何やってんだよ。
「そうねぇ。卵焼きは好きかしら?」
「好き!」
「ほんとっ!?じゃあ今度美輝のために作ってくるわ」
「やった!ありがとう!」
そう言うと、神楽ちゃんも新八くんも近藤くんまでドンマイとでも言うような苦笑いをしている。
あの土方くんまで。
え、どーゆうこと…?
まぁいっか。
貴重な食料なワケだし!
後に、このときのことを激しく後悔するなんて思ってもいなかった――…。
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