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「なんだ土方さんかよ」
「なんだとはなんだ」
「…ん?」
ふと気付いたように、王子のような彼がいきなりこっちを見た。
私もまじまじと彼を見ていたので、自然と目が合ってしまう。
吸い込まれちゃいそうに大きくクリクリとした綺麗な栗色の瞳と。
見れば見るほど整った顔。
女の私からしても羨ましく思ってしまうほどの美形。
…うん 超タイプだわ。
もうヤバイ。
どのくらいヤバイかって言うと、超ヤバイ。
私が内心そんなことを考えているなんて知るはずもなく、彼はキョトンとした顔で普通に訊いてきた。
「誰ですかィ?」
しかも単刀直入に。
「桜井っていいます」
「もしかして…美輝?」
「え… 何で知ってるの」
(私、有名だったり!?)
「姉上が言ってやした」
「お姉ちゃんいるんだ!」
王子に見えた彼は…ってゆーか、もう王子でいいや。
その王子は「まあねィ」と頷き、少し考えてから、
「じゃあ…とりあえず家にあがってくだせェ」
と言った。
「いいの!?」
「姉上に会わせまさァ」
(やった!)
私は心の中で小さくガッツポーズをした。
そして案内されるまま沖田家へと入っていった。
一人の男、土方を残して。
「え…ちょっ待てよ!」
「あ、忘れてたやした。土方さんは先に学校行っててくだせェ」
「(私も忘れてた…)ごめんね土方くん。ありがとう!」
―――バタンッ
「チッ… 言われなくても勝手に行くっつーの」
それより美輝って奴。
一体、何者だ…?
総悟が学校来たら問い詰めてやろう。
そう心に決めて歩き出した。
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