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別世界で1




私の、ここは別世界だということばに、青年は一瞬ポカンとし、すぐ深刻そうな顔になった。




「お前…アタマ大丈夫か?」



「……」


ちょっとまて。
何で私がおかしい人みたいに言われなきゃなんないんだよ!美青年だったら何言っても許されると思うなよ!私を変人だと思ったせいか、完全に警戒心といてるし!…いや、それはいいことだけど、なんか釈然としない。

というより私からすればこの青年のほうが十分おかしな人だ。

でもよくよく考えて見れば、外見は漫画の彼とほぼ一致する。ただ、目の前の青年は高校生で、中学生だった作中より、いくらか成長しているが。

それより、

「あんた自分が変な空間からうちのお風呂に現れたこと忘れたの?」

そう言うと青年は思いっきり身を乗り出した。

「だからって別世界とか、更に非現実的だろ!?んなこと言われて、はい、そうですかって言えるか!なんなら証拠見せてみろ!」

…まあ、その通りだ。

「証拠かぁ…でも、この世界とキミの世界はほとんど変わらないし、むしろキミがダイナマイトを大量に隠し持ってることなんかが証拠みたいなもんだから…」

青年は ほらみろそんな証拠ねぇだろ とでも言いたげな顔をしている。ちょっと困った。

…あ!肝心なモノを忘れてた。
でも私はそれを持っていない。



「ちょっと外出るよ!」

「は?」

「あんたも一緒に行くの!立ってホラ!」

「ちょ…おいっ」

私は青年の腕をひっつかんで、玄関へ向かった。彼の靴は濡れてぐちゃぐちゃだから、適当にサンダルを貸す。
さっさと鍵をかけ、外へ出た。
ジャージ姿の男女がなんとも奇妙だが、気にしてられない。

暗い住宅街を早足で歩く。しばらくすると、比較的明るい通りに出た。

「おい、どこに行く気だよ…」

「よかったぁ、まだ開いてた」

夜だからと心配してたけど、間に合ったようだ。

「?」

「本屋よ。証拠を見せるからその辺にいて」

「は?おい!」


こうなったら最大の証拠、漫画を見せるしかない。
外で待っててもらうのは、彼の正体に気付く人がいる可能性を考えてのこと。さすがに彼の登場する漫画を持って一緒にレジに並ぶのは不安だったワケだ。
とはいえ成長した外見だし、漫画を知る私も全然気づかなかったから大丈夫とは思うけど、用心に越したことはない。
とにかくさっさと1人で買いに行った。








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