抑えきれない お兄さんの相手にも、そろそろうんざりしていた。酒に酔った人間というのは本当にめんどくさい生き物だ。でも今日くらい、ちゃんと相手をしてあげなくてはいけない。オレはこの人から、可愛い妹を奪ってしまうのだから。 小さい頃の京子は云々かんぬん… だらだらとお兄さんの話は続く。小さい頃の京子ちゃんは確かに可愛かっただろうけど、さすがにシスコンすぎる。呆れ半分だが、だんだんと本当に申し訳なくなってきた。 あまり聞きたくなくて、お兄さんの話をほとんど聞き流しつつ、辺りをぼんやり眺めていたら、ナマエが視界に入った。 婚約者であるハルと何やら話をしていた。 嫌な感情が心に渦巻いたが、それを無視する。 分かってる。ナマエの行動はすべて、オレのためなんだって。 だからまだ、我慢できる。 小さく深呼吸をした。 気づけばハルはどこかへ行ってしまっていて、ナマエの前には京子ちゃんが立っていた。 今度は、先ほどの比ではないほどの、どす黒い感情が心を埋め尽くした。 そう、この結婚には問題がある。 この際、京子ちゃんがオレ以外の男を好きだろうが、それは大したことではない。 本当に問題なのは、オレの心の方だった。 ナマエが京子ちゃん何か言って、京子ちゃんは微笑んだ。 やめろ。やめてくれ… 普段無表情であることが多いナマエが、珍しく笑顔で何か言うと、京子ちゃんは頬をほんのり赤くして、すごく嬉しそうに笑った。 やめろ、やめてくれよ! 頭が一瞬でスパークする。 嫌だ。見たくない。やめてくれ。やめるんだ。オレにだって滅多にそんな顔見せてくれないのに、一体どういうことだよ。それもなんでこんな時にそんな顔するんだ。周りに人がたくさんいるじゃないか。オレ以外にそんな顔見せるなよ。お前の顔は注目を集めるんだ。お前は自分がどんなに魅力的か分かってないんだろ?周りの奴等が惚れてしまったらどうするんだ。そんなの耐えられない。なあ、お願いだからやめてくれよ。嫌なんだ。オレ以外にその綺麗な顔を見せるのも、こんな醜い嫉妬をする自分自身も。嫌なんだよ。気持ちを抑えられないんだ。お前のことが好きなんだよ。好きで好きで好きでたまらないんだ。お願いだよ。オレだけを見て、オレの側にいて、オレ以外に触れないで、オレを愛して。お前さえ居てくれれば、オレはボンゴレですらどうでもいいんだ。でもそんな無責任、優しいお前は許さないんだろ?だからオレはこの状況を受け入れた。オレの中心はお前なんだ。だから自己中心的なこのオレがこんなにも我慢しているんだ。お前はそれもこれも全部分かってるんだろ?だったらなんでオレが嫌がることをするんだよ、なあ? 好きなんだ。 好きすぎてどうにかなってしまいそうなんだ。 だからもっと、オレだけを見てくれよ、 ナマエ…… 抑えきれない (愛してるんだ、ナマエ。これ以上ないほどに) . |