そのやり取りは俺の密かな癒しなんだ。 「それから、捕虜の情報もある。見つ」 「ニャオォ〜〜〜〜ォ、―――ナァア〜〜オウ…」 「け次第、…、フルトン回収しろ。出来ない状態ならヘリ回収。以上だ。全員生きて戻ってこい」 「Sir, Yes sir!!」 任務の説明を終えて一息吐く。 隊員6人は細かな動きの打ち合わせを話しながらランディング・ゾーンに向かっていき、姿が見えなくなってから、“声”の方角を捜せば随分高いところに彼女が居た。見るに“力”を使って配達中のようだ。俺と目が合ったと分かったのか、 「ナァアーーオゥ」 もう一度彼女が“鳴く”。 「ニ゛ャァ゛アアゴ」 「メェ〜〜ンっ」 内部へ入った姿を見送ってから、俺は俺で訓練場に足を向ける。こんな事になったのはそもそもミラーが原因だ。 「ほう、猫の鳴き真似も上手いな、昴。そうだ、オセロット、昔のように言ってみたらどうだ。スネークから聞いたことがある、部隊の統率に鳴くとな」 「は?」 彼女は幼児並みの英語力でミラーの言ったことを汲み取ったらしく、しゃがんでDDを撫でたままで俺を見上げた挙げ句、鳴き真似をもう一度やった。 「ミヤオウ?」 「……」 「なあ、スネーク。あんたも懐かしいのを聞きたいよなあ?」 「そうだな」 ヴェノム、お前…、単に聞いてみたいだけだろう!さも懐かしさに浸りたいみたいな言い方しやがって!―――…く、流石は“影”に選んだ男だ……。 6つの目が俺から外れない。 「………。ニ゛ェエ゛エ゛ェ」 あの時は、余計なことを、と面倒に思ったが、3週間経った今はまぁ悪い気はしなくなったよ。 噂をされているのを知ってるが悪影響はないと判断し放っている。 訓練場に着けば、何人かが訓練をしていた。人間の上半身を模した的を肩、心臓、頭と正確に撃つ隊員もいれば、―――…おっと?続けざまに3発、早撃ちで肺を狙う隊員もいた。俺は彼に、 「もう一度」 と指示を出す。オートマを使っているのに、肘を曲げているということは―――…、 「っあ」 やはりな。ジャムに戸惑う隊員からオートマを預かり、弾層を抜き渡して絡んだビュレッドを外す。 「ウエスタンでも観たか?」 最近、ダイアモンドドッグスを勘違いしてる隊員が増えた気がして、俺は釘を刺した。とはいえ、良い技術は良い。さっきのウエスタンかぶれの隊員には 「だが早撃ちは見事だった。―――いいセンスだ」 と、褒めて別の訓練場に向かう。 「…!」 振り返ればヴェノムが居て、一瞬ビッグ・ボスと見間違えて息が詰まった。勿論、奴にはこの気まずさは解る筈もない。小さい会釈でその場を遣り過ごして、改めて別の訓練場に足を向けた。 「みやぉうっ」 「っ…、なんだ、お前か。配達は済んだのか」 「―――、終わりました。あなたはどこへ行きますか?」 「訓練場だ」 「――…、私は見たいです。一緒、いいですか?」 隊員の士気も上がるだろうし俺はそれを許可した。 「みゃうっ」 「……………ナァ゛ア゛」 遠くにいるわけでもないのに返した俺を驚きながら見上げてくるも、すぐに笑顔になった。 このやり取りは俺の密かな癒しなんだ。 |