side G short
□白と黒 近藤←総悟
あの人は真っ白で眩しい。
まるで洗濯石鹸のキャッチフレーズが如く。
それにひきかえ自分はなんて黒い。
黒いどころか世界が嫉妬する位ドス黒い。
「総悟、今日は非番か?」
芸能人並みの白い歯を光らせて笑う。
屈託の無い可愛い人。
「あんまり遅くまで出歩くなよ」
いつまでも俺のことを子供扱いする。
いつまでたってもだ。
「今日は雨ですからねェ、たまには部屋でごろごろしまさァ」
その広い背中に俺達真撰組全部を背負い込んで尚真っ直ぐ立っていられる人。
憧れなんてそんな安い言葉じゃとても言い表す事なんてできない、この気持ち。
どうしたら真撰組の一部じゃなくて俺自身を見てくれるんだろう?
「そうか、じゃあ午後の会議まで時間があるから昼飯でも食いに行くか?」
「本当ですかィ!」
「おお、美味い蕎麦屋を見つけたんだ、連れて行ってやる」
アンタにとっちゃ俺は可愛い弟みたいなもんだろうけど実際俺はそんな一言にだって至福の喜びを感じるんだ。
「ちなみにお妙さんもよく行くらしいから、もしかしたら逢えるかもしれんな!」
って、そんな満面の笑みで言われるとダメージもでかい…
実際そんな一言に…笑ってられねぇほど胸が痛い。
「あー…やっぱり遠慮しまさァ、俺先約があったんで」
「何だそうか。じゃあ今度行こうな」
残念そうにでかい手を振りながら廊下の奥へと消えて行った。
こんなドス黒い感情気付かなきゃ良かったのに。
そうしたら今まで通り楽しく過ごせたはず。
今だって仲良く蕎麦すすれたってのに。
「そんなところで何してんだ?」
こういう時はむかつく事が重なる。
イラついてる心に更に拍車を掛ける呼び声。
「どうしたら土方さんを事故死に見せかけられるか考えていたんでさァ」
「ハイハイ」
あの人に一番近い場所にいるこの男。
その右腕とも言われる地位に着くこの男にまでその醜い感情の矛先が向く。
自分ではどうにもならないのは分ってるけど。
「死ね土方」
「何だとコラァ?ったく可愛気ねぇな」
お前に可愛いだなんて思われてたまるか。死ね土方。
俺が思われたいのは唯一人。
「雨止まねぇかな」
「そう言えば今週はずっと雨らしいな」
「洗濯したいのに」
「はぁ?お前がか?」
「黒いシミを取りたいんでさァ」
「…ふ〜ん…?」
洗って洗って洗えばいつか落ちるんだろうか、この染みは。
そうしたらあの人と同じように真っ白で眩しいくらいの男になれる?
あの人の隣に居ても遜色ない程に。
その為にも、
「死ね土方」
「何だとコラァ」
まずは副局長の座。
それから、
「スプーン一杯でこの黒い染みが取れればいいのにねェ」
-end-
20070515
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