ハヤト×エリカ/こけち様(5/13提出)




「ハヤトさんは元気にしているかしら…」


お互いのジム業務が忙しくて、もう数ヶ月会っていない。

声を聞くと恋しくなるから電話もしていない。


自宅の縁側に座り、
漆黒の夜空を見上げ遠い街に住んでいる彼に思いを馳せる。


外灯や、ネオンが騒がしいこの都会の街には星が無い。

いつかハヤトの鳥ポケモンの背に乗って見た目まぐるしい程の星空を思い出して、エリカは溜め息をついた。



「いつになったら会えるのでしょうね?」

隣に腰を掛けているラフレシアに問い掛ける。


「遠距離恋愛がこんなに辛いなんて…」

リニアが開通し、交通の便は良くなったもののジムの空き時間に気軽に立ち寄れる距離ではない。


「ハヤトさんに会いたい」

ラフレシアは肩を落とすエリカを心配そうに見つめていた。


「もう…私ったら仕方ないですわね。こういう時は眠ってしまうのが一番ですわ。」


エリカがラフレシアを連れ家の中に戻ろうとすると、中庭の木々に住み着いている野生の虫ポケモン達がざわざわと騒ぎ出した。


ラフレシアも何やら空を指差している。



「あれは…?」


ラフレシアの指差している方を見上げたエリカは歓喜した。


ピジョットの背に乗って向かってくるのは、ずっとずっと会いたかった人だったから。



「ハヤトさん!」
「久しぶりだな」


エリカはハヤトに駆け寄った。

「でも、どうして…?」
「エリカさんに会いたくなったから。」

ハヤトは照れ臭そうに、得意気に言った。


「まあ、こんな長距離…ご苦労様。」

エリカは一番にピジョットの身体を気遣い頭を撫でた。


「あの、エリカさん?俺は…?」

感動の再開を予想していたハヤトは些か拍子抜けしたが、久しぶりに見るエリカの笑顔に嬉しくなった。


「お久しぶりです。ずっと会いたかったんですよ。今も丁度ハヤトさんの事を考えていました。」

「俺もずっと会いたかったんだ。エリカさんも忙しいだろうから我慢してたけど、限界だった。」



夜空の下、二人は肩を寄せ合い、久しぶりに話をした。

話題が絶えること無くあっという間に時計は深夜を回っていた。


「そろそろ戻らなきゃなあ。」
「今日は会えて嬉しかったです。」

二人は迫る別れの時間を惜しんだ。

「いつでも空を飛んで会いに行くって言っただろ?」
「それにしても来て下さるのが遅すぎです。」
「悪かったって…」

「今度は私から会いに行けるように国にタマムシとキキョウ間に線路を通すよう要請しますわ!お金ならありますから。」
「エリカさんならやりかねないなー」


驚愕するハヤトを見てエリカはくすくすと笑った。


「空は繋がっているから…また俺からすぐに会いに来るよ。」
「お待ちしてますわ。」



ハヤトはピジョットの背に乗り復路を辿った。


「お気をつけて。」

ハヤトの姿が見えなくなるまでエリカは手を振り続けた。


視界を地面に移すと、ピジョットが飛び立つ瞬間に抜け落ちたであろう羽が落ちていた。


「ふふ…彼は飛鳥の王子様、でしょうか。」



思いがけない逢瀬に夢心地のまま、エリカが眠りについた頃…



「畜生〜いい雰囲気だったのにキスの一つも出来なかった!またヘタレ扱いされる…(マツバに)」

上空で、ハヤトは悶々としていた。



明日も空を飛んで会いに行こう。
それから空中散歩にでも誘って…
ロマンチックな夜景に後押しを頼み彼女と一つ、御近づきになってやる。


闘志に燃える“飛鳥の王子様”は自宅に舞い戻った後も眠れない夜を過ごしていた。







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あきゅろす。
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