レッド×ブルー/音子様(6/16提出)





海の魔物と戦って間もなく、急遽図鑑所有者によって行われる事となった、バトルトーナメントが開催された。
リーグ以来、こういう事には興味なかったけれど、折角やるんだもの。楽しまなきゃ損だと思った。
一回戦は難無く勝つ事が出来たわ。いくらアタシだって、後輩に負ける程やわじゃないって事よ。でもね、問題はその次よ。やるのも馬鹿らしくなってくるくらいね。
だって、アタシには絶対勝つ事の出来ない相手が二人ほどいて、その一人と、アタシは早くも当たる事となったんだから。

第9回ポケモンリーグ優勝経験者、レッド。そいつがアタシの次の対戦相手。
もう言わなくても分かるわね。でも、あえて言わせてもらうわ。そう、アタシは、レッドに負けたのよ。

そもそも、アタシが得意とするのは、場所や地形を生かした相手を欺く戦法であって、ルールが定められた公式なバトルじゃない。そんなアタシが、あの直球的なバトル馬鹿に勝てるわけないじゃない。
というか、アイツに勝てる奴なんて、あの中にいるのかしら。相手が出来るのって、グリーンくらいなものよ?

「……なんか、腹立ってくるわ」

実力を見せつけられたみたいで。しかもアイツ、戦う前にこちらを見て笑っていたんだもの。まるで勝利を確信しているような感じで。ムカつくと思ってしまう自分が嫌だわ。
だってアタシ、勝てない事を自分でも分かってたのよ?実力の無さを、八つ当たりするにも程がある。本当なら、素直に応援しなくちゃいけないのに、応援したいのに……。
苛立つ気持ちを抑えたくて、アタシはは休む為に、各々に用意された控室に戻っていった。

戻っていったんだけど………、

「……なんで、アタシの控室にレッドがいるのかしら?」

「よっ」

「よっ、じゃないわよ。椅子に座って、くつろいじゃって。どういう事か説明してくれる?」

「なぁ、ブルー。トーナメント、誰が勝つかな」

そこでアタシは深く溜息をついた。
あろう事か、レッドはアタシの要求を無視しつつ、一人で勝手に喋り始めたのだ。
こうなってしまったら、レッドは止まらない。止められない。アタシは、そんなレッドの話を黙って聞いているしかない。仕方がなく、アタシは傍にあった椅子に腰掛けて、淡々とその話しに耳を傾ける事にした。

「グリーンはやっぱり強いよな。俺が唯一認めるライバルだし。ゴールドは一つ一つの威力は弱いけど、たまに大きく爆発するから怖いんだ」

「ルビーって子は、暴走したポケモンとの乱戦の時、目茶苦茶強い印象を受けたよ。エメラルドは、さっきのバトルを見ると、戦略や知略がしっかりしてた」

「なぁ、ブルーは誰が勝つと思う?」

あぁ、もう面倒臭いやつね。
アタシだって分かってるわよ。そして、レッドだって分かっているんでしょ?なのにアタシの口から言わせるような事言って、いかにも余裕ですって顔して、にやりと笑って。アタシの反応を伺うような真似をするなんて。
あんたはいつも卑怯よ。そうやって、アタシのペースを掻き乱して、アタシを追い詰めていくんだから。
そして、……アタシも結局は卑怯なのよ。こんな真似されても、なかなか素直になれない自分がいるのだから。

「…それ、わざと言ってるのよね?」

「そうだけど、ブルーも分かってて聞いてるんだろ?」

「アタシは……っ、」


そんな時だった。
タイミングが良いのか悪いのか、部屋に設置されているスピーカーからアナウンスが鳴った。内容は、もうすぐ出番なので、レッドを呼び出すもの。
それを静かに聞き届けたレッドは、黙って椅子から立ち上がり、こちらを見て微笑んだ。

「じゃあ、俺出番だから行くよ」

「……ぁ、」

さっきまで、長々とアタシに喋り続けていたレッドが、こんなにもあっさりと部屋から出ようするのね。こうしてアタシが淋しく思う事も、きっとレッドの中じゃ想定内。
アタシって馬鹿よ。なんで、こうまでしても素直になれないのかしら。本当は言いたいのよ。アイツに伝えたいのよ。でも………っ、

ねぇ、このまま行かせても良いの?
何も言えず、何も伝えられず、本当にそれで良いの?

アタシは………っ、


「……レッド。アタシ、信じてるからね。だから、頑張ってきなさい……!」

「おぅ!」

待ち望んでいたであろう、アタシのその一声に、レッドは満足したのか、満面の笑みでそう答えた。その笑顔がとても眩しくて、どきりと胸が高鳴って、アタシは、アイツが去った後の扉を見つめたまま、その場から一歩も動けずにいた。
顔が熱い。きっと赤く染まっているに違いない。鏡を見なくたって分かる。

ああ、もう。どんなにからかわれても、どんなにムカついても、アタシはアイツを憎めないし、応援だってするわ。……だって、好きなんだもの。アイツを好きになっちゃったんだもの。
惚れた弱みってやつかしら?あながち間違いじゃないわね。アイツは、その弱みに、巧につけこむんだから。そんなアタシも、嫌ではないけれど。

ねぇ、レッド。そんなに自信があるのなら、絶対に勝ちなさい。アタシがアンタを応援してあげるんだから、負ける事は許さないわよ。

さぁ、行きましょうか。アイツの舞台へ。あんな事言ったんだもの。アイツの勇姿をちゃんとこの目に焼き付けないとね…。


「信じてるわよ、レッド…」




腹黒レッドに振り回されるブルーなんてどうですか?
そんなレブルが好きです。
それを主張させてくれたこの企画と、主催者様。そして、見てくれた人達に感謝の意を込めて、ありがとうございました!

10.6.16







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