[携帯モード] [URL送信]

宝物
カラレス(和魚様/ヨハ二十)



「何処に行くって………………?」


「だから、この間知り合ったヤツの所だよ。
何日かは泊まると思う。」



「………………………」





ヨハンは暫く言葉が出なかった。
とてつもなくタイミングが悪いことだ。
目の前にいる彼………十代には、先日思いの丈を伝えたばかりだった。
デュエルアカデミアという枷がなくなった十代はどこまでも自由で、根なし草そのもの過ぎた。
たまに会うたびに、空腹で倒れる寸前だったり、傷だらけだったり、果ては次元を越えて危うく消滅するところだったり………………
そんな彼を家に引きずり込んで面倒を見るのがヨハンの日常になってしまった。


帰る家が無いなら、いつでも帰ってくればいい。
俺は十代のことが好きだ。


そんな話をした。



十代はそれを受け入れ、実質的には恋人と呼ぶであろう関係に落ち着いた。


キスもした。

それ以外のこともした。

好きだって言い合ったり、目と目が合えば笑いあったりして、

楽しかった。

少なくともヨハンはそうだった。


それがここ数日、急に十代の態度が冷たくなって好きともいってくれなくなった。


普通恋人にそんな風にされたら心配なるだろう。

何か気を悪くしてしまったのだろうか。

それとも恋心が覚めてしまったのだろうか。



ヨハンの不安は募る一方だった。









「………………行くなって言ったら、どうする?」



ヨハンが沸き立つ感情を抑えて絞り出した。十代は泊まるのに必要であろう物を袋に詰めるのを止め振り返った。


「なんで?」


随分とあっさり言う。

それだけでヨハンの中の何かが沸々と沸き上がってはち切れそうになる。



「なんで………って、俺は、十代とは………………十代のことを恋人だと思ってる………。恋人が他の男の所に泊まりに行くなんて、そんなの嫉妬しないわけがないだろう!?」

「ふーん………」

「なんだよ………何とも思わないのかよ………」


ヨハンは項垂れる他なかった。
興味無いと言わんばかりの態度は、明らかに恋愛感情が消失しているとしか思えない。
少し前には嫉妬されるのが嬉しいと言っていたこともあったのに。


そんな心配しなくても、俺の一番は

ヨハンだから



例えばそんな言葉をくれたらどんなに救われただろう。


「別に、何とも。」



予想はしていてもダメージは計り知れない。
心変わりしてしまったと言うのなら、その現実は受け止めなければならないだろう。

だけど、涙と、反発的に動いた体をどうすることも



出来なかった。




首を包み込んだ指に力を込めたところで、目の前には自分への興味を失った十代の脱け殻が横たわるだけだ。

何よりもそれすらも興味無さそうにしている彼を見下ろしている自分が酷く滑稽に思えた。


「十代が俺のこと……そんな風に見れなくなっても………興味が無くなってしまっても………………俺は変わらず十代が好きだ。」


笑顔を作ってみても涙は止まらない。
なんてカッコ悪い男なんだろうかと、自分で自分を笑った。


随分と熱のこもった雨を静観していた十代は暫くして口を開く。


「お前さ、なんで俺がお前のこと嫌いになった前提で話してんだよ………」


「………………………へ?」


「俺……ヨハンのこと嫌いになったなんて一言も言ってないぜ?」


ヨハンは絶句した。
だってあんな態度をとられて、あんな風に言われて………そう思わない方がおかしい。



「俺さぁ……最近あるんだよ…急に何もかもどうでも良くなって、何に対しても感情が鈍くなるっていうか、感じなくなるのがさ。だからヨハンが悪いとか、興味無くなったとか、そんなんじゃないんだ。」



だから泣くなよ。



十代はヨハンの目尻を指で拭った。
細めた目蓋を開いた先には、困りながらも微笑む十代がいた。



「それともそんな俺は嫌いか?」



「そんなわけないだろう!?」


ヨハンは十代を抱き起こして目を見開いた。
その目には曇りはなかった。



「どんな十代だって十代を変わりはない!
俺は十代が好きなんだ……!
誰よりも大切に思ってる!!」


「………………ありがとうな。」





十代は笑ったけど、決して「俺もだ」とは言ってくれなかった






「止めないのか?」


約束したから。
そう言って十代は家を出ていこうとする。


「いいんだ。
十代のこと信じるって決めたから。待ってる。
また帰って来てくれるだろ?」



「まぁな。」


ヨハンはまだ何か言いたげにしていたが、言わないものを無理に聞きたいとは思わない。
そのまま出掛け用の袋を持って玄関を出ようとすると急に引っ張られた。



「いってらっしゃい。」



それはヨハンが出来る精一杯優しい包容と、別れのキスだった。



「……行ってきます。」




ぎこちなく返事をしてゆっくりと歩き出す。

扉の向こうで、ヨハンは姿が見えなくなるまで小さく手を降って笑っていた。











「………きっと、お前も………………ずっと好きでいることなんて………………そんな保証は何処にもないだろ?」















十代の言葉はまだヨハンに届いていない。









[end]



和魚様からヨハ十小説をいただきました!
シロ「ヨハ十に飢えたんで漫画描きます!でも自分のじゃ満足できません!!」
和魚さん「自分のは萌えない!」
シロ「あああの私グッズ頑張るのでヨハ十くださりませせせんか」
和魚さん「その挑戦受けてたとう」
シロ「ううっありがたきしあわせ!!」
といった流れ書いていただいたような気もしますが
違うかもしれません。
私の悶えポイントを的確に突いてくださってとてもうれしくありがたいです

ありがとうございましたっ
シロ

[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
無料HPエムペ!