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小説
ツッコミ不在(R-15)
!attention!

※ちょっと下品。(R-15くらい)
かっこいいヨハンもかっこいい十代もいません。
なんでも許せる方のみスクロールどうぞ。
ちょっとでも嫌な予感がしたらそっ閉じ推奨。






































































 どうしよう。どうしたらいいんだ、これ。
俺は過去最大に焦っている。これは、誰が悪いとかそういうもんでもないし
ましてやデュエルで解決するものでもない。
 項垂れたまま何も言わないヨハンの背中を見ながらオロオロとしたり、ダラダラと冷や汗をかいている俺はさぞかし滑稽だろうが今は何ふり構っていられない。
なんでこんな事になったのか、というと事は数十分前まで遡る。


 俺とヨハンは付き合ってる。所謂恋人同士ってやつだ。
告白はヨハンから。アカデミアから帰国する前に、好きだから付き合いたいというストレートな言葉だった。
すぐに応えることはできなかったが、なんやかんやあって結局付き合う事になった。
 付き合おうという一言があんなに勇気がいるなんて想像もしてなかったが、ヨハンは嬉しそうに笑って抱きしめてくれた。
待たせちまって悪かったなぁ、なんて思いながら抱き合ってたのもいい思い出だ。
 手を繋いで買い物に行ったり、映画を観に行ったり、キスをしたりと恋人としては順調に進んでいった。
あんまり会えない期間が長いと、会ったそばから愛してるだとか、オレの十代とか、聞いてるとユベルに乗っ取られた時の事を思い出すようなねちっこい声で行ってくるのは微妙な気持ちになるが
概ね良好な関係を築けていた。はずだった。
 恋人としてしていない行為、それがまあ、ベッドでする、そういうやつ。
夜になって、お互いシャワーも浴びて酒を飲みながらぼーっとテレビを観ていたらそういう雰囲気になって、舌と舌を絡めるようなエロいキスもして
ああ、とうとう今日すんのかと思ってたらヨハンに抱き上げられてあれよあれよという間にベッドの上に。
 興奮してんのか顔を赤くしてハアハアいって、ヨハンもこんな顔するのかと驚きと、多分俺も興奮をして、服を脱がされたり脱がしたりしてたらヨハンが突然固まった。
 デッキはリビングに置いてあるし、みんな空気を読んで出ては来ない。ユベルも、後で茶化される事はあっても邪魔をしたりはしない。
精霊の声は聞こえなければ、何か不穏な空気がどこからか……なんてこともない。
なんで固まってるのかよくわからなくてぱちぱちと瞬きをする。

「ヨハン?」

 あれ、今のってする流れじゃなかったのか?俺もヨハンもパンイチだし。
呼びかけても反応はなく、目の前で手を振ってみる。
 反応がない。ただの屍のようだ。いつだかやったようなゲームに出てくる一文が頭に浮かぶ。
いやいや、ふざけてる場合じゃないな。

「どうしたんだ、具合でも悪くなったか?」

 そういえば飲み始めは結構な勢いでガバガバと酒を飲んでいた気がする。
もしかしたら、ヨハンはずっと今日はするつもりで、緊張していたのかもしれない。そう思えば思い当たるふしがある。
酒に弱いわけではないが、酔いが急に回ってきたとか、きゅーせーアルコールなんちゃらとか。
可能性はゼロではない。

「おい、ヨハン!」
「……十代」
「どうした?具合悪いなら病院行くか?」
「勃たない」
「は?」
「勃たないんだ、十代」

 なにがって、ナニが。だよな。
は?何言ってるんだ?

「なんで?」

 純粋な疑問をぶつけるとヨハンの目が潤んだ。
え、泣くのか?俺なにか変なこと言った??
全くわからない。

「酒!飲みすぎて!勃たない!!」
「あ、ああー……」
「今日は十代と最高の夜にしようと思ったのにっ」

 なんとなく聞いたことあるな。酒でたちにくくなる、みたいな。うん。
そんでやっぱりやる気満々だったんだな、ヨハン。
縁いっぱいに涙を溜めて形のいい眉を下げてるヨハンは、なんというか、かわいい。

「まあ、それなら今日はゆっくりしようぜ。明日もあるんだし」
「なんで十代はそう余裕なんだよ、ずるい」
「ヨハンを見てたらなんか、な……」
「オレ、かっこ悪いよな……」

 そう言ってヨハンは俺の上からどいて、背中を向けてベッドに腰をかけた。
え、拗ねた……?なんでだよ。フォローしたつもりなのに。


 そして冒頭に戻る。回想終了。ターンエンドだ。
俺悪くないよな?
ぐすぐすと聞こえてくるのはもしかしなくとも鼻水を啜ってる音で、ヨハンは今泣いてる。
抱きしめるべきか?それともヨハンのが勃たなくても俺は勃つしなんとかなるぜ!って励ますべきか?
わからん。正解はどっちだ。
そもそも俺は男同士のあれこれに詳しくない。ヨハンは知ってたんだろう(やる気満々だったし)が、こっちは知識ゼロだ。

「ヨハン、風邪、ひくぜ」
「!!」

 びくりとヨハンの肩が跳ね上がってとうとう嗚咽が聞こえてきた。間違えた!今のは対応を間違えたんだな?!ヨハンを泣かせちまった。
どうすればいい。考えろ遊城十代!
過去の記憶、旅先で聞いた話、とにかく該当しそうなもんを引っ張り起こす。
恋人が落ち込んでる時の対応……そうだ!いつだか酒場で男達が話していたことを思い出す。

「ヨハン、おっぱいのむ?」

 曰く男にとっておっぱいは最高で、どんな事があっても乗り越えられるとか。
恋人に「おっぱいのむ?」と聞かれたら疲れも嫌なことも全部吹き飛ぶと言っていた。
顔も覚えてないけどお前達を信じるぜ!
ヨハンは少し体を捻って小さく頷いた。
俺は内心ガッツポーズをきめた。
 デカイ赤ちゃんみたいに抱きついてちゅうちゅう吸われても出るもんはないけど、おっぱいはヨハンにも効いたみたいだ。
ありがとうおっぱい男達。これでオレとヨハンの大切な時間とヨハンのプライドは守られた。多分。
筋肉のついた綺麗な背中を撫でたりトントンと叩いてやるとだんだん眠くなってきたのかヨハンの吸う力が弱まってくる。

「な、一緒に寝ようぜ。明日は朝飯俺が作るし、天気がよかったら出掛けよう」
「……オレ、かっこ悪い…………」
「ヨハンはいつでもかっこいいぜ!」
「本当に?」
「ああ!」
「よかった……」

 ごろんと横になって毛布を被る。
これで一件落着。ヨハンは朝になれば元気になってるだろうし、次は酒も控えるだろうから問題ない。
 おっぱいってすげぇんだな。
今回俺はおっぱいに助けられた。普段雑に扱ってきたがこれからは少し優しくしてみよう。
ありがとうな、おっぱい。
俺は襲い来る眠気に身を任せて目を閉じた。


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あきゅろす。
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