強がりして、本当は寂しいんでしょ?(ルチ恋人前提ジャ/OP)
ベッドの上。もうすぐ陽が昇る。
背を向ける女、その背中をぼんやりと眺めている俺。
2人共、心中は複雑。
恐る恐る、口を開く。
「なぁ、姫」
「…何?」
今日だぜ、アイツが帰ってくんの。
ピク。小さく肩が揺れる。
少し不機嫌そうな声。
背を向けられている所為で表情は見えないが。
「関係ないよ。あんな奴」
はぁ、と1つ溜息を吐き。
「俺が言えることじゃねェが……」
「じゃあ言わないで」
細い腕がこちらに伸びる。
未だ背は向けたまま。
肩肘をついて頭を支えていた俺の、空いている方の手を掴み。
そのまま引き寄せると、腕を自分の体に回させる。
その白い肌に直に触れたことで、小さく震えているのがわかった。
「やだ。何も言わないで。傍にいて」
思わず抱き締めてしまいそうになるのを、必死に堪える。
腕を、体を離し、ベッドから降りる。
わかってたんだ。俺じゃダメだってことくらい。
でも、あんな弱々しい瞳ェして来られたら、つい。
小さな手を、握り返しちまった。
戻ろう。
全てリセットしよう。
5年前の、あの日に。
「ジャブラ…?」
戸惑うような顔。
思えば、こんなに冷たくしたことはなかったな、なんて。
「さっさと服着ろよ。挨拶しに行くぞ」
そんで、ケリつけよう。
5年も苦しんだ、お前の気持ちに。
「嫌…嫌だよ。アタシ行かないから」
「我儘言ってんじゃねぇ」
反抗的な瞳。
でも、それには応じず散らかっていた服を掻き集め、ベッド上の彼女へと放る。
驚いたような、困ったような彼女に苦笑して。
「早くしろよ。ついて行ってやっから」
強がっていた心は、いつしか哀しみに染まり。
その綺麗な瞳から、零れる涙。
「何で…何で……?」
「お前の為だ」
「嘘…そんなの…」
「嘘じゃねェ」
ふるふると首を横に振る。
涙は次から次へと溢れてきて。
「アタシが邪魔になった?」
「ンなわけねェ。お前のことは愛してる。きっと化け猫にも負けねぇくらい」
「じゃあ、何でッ……!?」
苦痛に、辛さに歪む表情。
必死に、俺に抱きついて。
「何で…5年も自分の女放っておくような男の所に帰らせるの……」
あぁ、ゴメンな。
こんなに泣かせちまった。
もう少し。できればずっと傍にいたかった。
でも。
「さ。行くぞ。あんまりくっついてると別れんのが惜しくなっちまう」
目的の部屋の前に着き、繋いでいた手をそっと離す。
「俺はここまでだ。あとはお前1人で行け」
「…一緒に来て…くれないの?」
「俺が一緒だと変に疑われるだ狼牙」
ニッと笑って、背中を押す。
大丈夫、大丈夫。
今のお前ならきっと言えるだろう。
愛する人に“おかえり”と。
(コメント)
ジャブラが男だ…!(何)
切ない狼さん。
ルチ恋人前提のジャブ夢です。
ルチに置いて行かれ傷付きジャブの所へ。みたいな。
お題は「Fascinating」様よりお借りしました★
心の底から愛している女を、扉の向こうへと見送り。
涙は自然に溢れていた。
「化け猫…今度アイツを泣かせたら承知しねェぞ」
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