本日風邪日和(カク/OP)
不覚だった。
まさか、この私がアイツの手中に落ちるなんて。
「おはようさん、姫。元気かの?」
朝1番。にこやかに声をかけてきた男。
私と同じCP9の1人、カクだ。
「…私が風邪引いたの知ってて言ってるでしょ」
「何のことかのぅ」
ちょこんと首を傾げて言う。本当に頭にくる奴。
熱の所為でいつもより数段機嫌の悪い私は、
キッとカクを睨み付けた。
「何じゃ?それで睨んでるつもりか?いつもより数段迫力がないのぅ」
ケラケラと笑うカク。
「煩い。てか、何でアンタが私の部屋にいんのよ」
「長官に様子を見て来いと頼まれたのじゃ」
「(…あんの馬鹿長官…!)」
内心毒吐きながら、一応礼は言っておく。
「気にすることはない。弱ったお前さんを見るのも楽しいからの」
またケラケラと。私は体調の悪さも手伝って先刻より更にムッとした表情で。
「…私は大丈夫よ。もう出てっ……ゴホッ、ゴホッ」
「全然大丈夫そうには見えんがの?;」
「わた、しが大丈夫…って言ってる…でしょ……」
呼吸が苦しい。酸素がちゃんと吸えないよ。
その時、ふと私の額に何かが触れる。
「まだ熱があるようじゃの。しっかり寝ておれ」
急にカクの声が近くなった気がした。
目を開けると、額に置かれているのがカクの手だとすぐ知れた。
「カク……?」
「何じゃ?」
きょとん。とこちらを見てくる。いつもの顔。
「手……」
「て?」
「な、何勝手に私に触ってんのよ…!!……ゴホッ、ゴホッ」
叫ぼうとして息を吸ったら、思い切り咳き込んだ。
あぁ、何て弱っちぃんだ、私の体。
「これこれ。無理をするでない。病人はおとなしく寝ておれと言ったじゃろう」
ぐい、と押され、ベッドに寝かし付けられる。
「薬は飲んだのか?」
「まだ……」
「医者へは?」
「昨日行った……薬、確かその辺に………」
……あれ?何?何かおかしくない?
すっかりカクのペースじゃん。
………まぁ、いいか………
「薬……おぉ、コレか。今水を持ってくるから、大人しくしているんじゃよ?」
薬を飲んだら、また寝かし付けられた。その後、カクはベッドの横に椅子を持ってきて私の様子を見てた。
何回か帰っていいと言ったが、いいからいいからと言って、一向に帰る気配は見られなかった。
「……ぅ…ん……」
「姫?」
いつのまにか、眠ってしまっていたらしい。もうすっかり夜だった。カクは未だ私の傍に着いていた様だ。
それより。苦しさが昼間に比べて増してきている。呼吸が殆ど出来ないし、寒くて仕方なかった。
「姫……?姫ッ!!大丈夫か、苦しいんじゃな?!」
遠くで誰かが呼んでる……
誰…?
…頬に何かが触れてる…?
……手?
……あぁ、冷たくて…気持ち…良い……
「……姫ッ!?」
「……カク…?」
「良かった、目が覚めたんじゃな!」
心の底から嬉しそうな笑顔。優しい顔。安心する。
「夜中に急に熱が上がってしもうて、焦ったわい」
「…夢の中で、誰かが呼んでた。カクだったんだね」
「そうだ。カクは一晩中お前の看病をしていたんだ」
「まったく、世話のかかる奴だぜ」
「ルッチ…?ジャブラ…?」
「2人共姫のことが心配で、今朝来てくれたんじゃよ」
「そっか…ありがとう皆」
「礼ならカクに言うんだな。カクが1番心配してた」
「あぁ」
「ありがと、カク」
「気にすることはない。ワシがしたくてやったことじゃよ」
優しい皆に支えられて、幸せだなぁ、と思った。
あの時カクがいてくれなかったら、どんなに心細かったか。
あの時カクがいてくれて、どんなに心強かったか。
姫が自分の気持ちに気付くのは、もうすぐの事。
(コメント)
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