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キジルチ(微甘)








はいはい、と至極にこやかに流された自分の意見は消える訳にもいかず、部屋の空気中に舞う。

こうなってしまっては睨んでも声を荒げても取り合ってもらえないのは明白なので、手に持っていた書類は判をもらえないままでテーブルに置かれた。


苛立たしさを全面に押し出してソファに腰掛けると、のらりくらり彼が近付いてきて。





「久々に会ったのに、そんなに焦ることないでしょうが」

「早く任務を完了したいもので」

「まったく、困るくらい熱心な仕事ぶりだねえルッチは」

「褒め言葉としてもらっておきます」



言葉通り困ったような微笑を浮かべながら衣服のポケットを探り、やっとのことで見付けた大将の証でもある判をルッチの前でちらつかせた。嫌味でも何でもない、彼は心から楽しんでいる。

それをとうに察知しているルッチの気があまり長くないことも熟知の上なのだが、これ以上のからかいは得策ではないと感じたクザンの口からゴメンねと一言。



「このハンコ、高いんだよ」

「当然です、それさえあれば貴方や他大将の許可なしで書類が作れますから」

「ルッチも欲しい?」

「いえ、結構。失礼しました」



判さえもらえば後は用無しだと愛嬌なく立ち上がるルッチの腕が不意に掴まれた。掴んだのは言うまでもなく、大将青キジとして名高いクザンである。






「もうちょっといたら?」

「長官が待っていますので」

「固いこと言わない言わない」


断固拒否といった態度を見せているルッチが腕を引かれれば、予想外にもあっさりとその長い腕に包まれた。ソファに座ったクザンの膝を跨ぎ、ちゃっかり首に腕を回したりなどして。





「貴方の判には興味ありません」

「あらら、ハッキリ言うね。本当にいらない?」

「それよりも欲しいものがありますから」








ワルツでも一曲どうでしょう?


それと、貴方を丸ごと頂けますか


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あきゅろす。
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