【1位】花阿
無意識な愛情表現
「阿部隆也さーん?」
「なに、梓ちゃん」
「っ名前で呼ぶんじゃねえ!‥じゃなくて、何してんの」
状況説明をしよう。
久々の部活もない休み、阿部はオレの家に来ている。
2人で話しながらテレビ見てたら不意に阿部が立ち上がって、後ろから抱き着いてきた。そのまま無言で頭を撫でてきたから、ここで冒頭に戻る。
「何って、花井の頭撫でてんの」「いや、それはわかるけど‥‥オレの頭撫でて楽しいか?」
床に胡座をかいてるオレの後ろで立ち膝になっている阿部の顔は頭上にあって、視線だけ上に向けて尋ねる。
「‥‥さぁな」
「はあ?」
「だったら花井は何でオレの頭撫でるんだよ」
「いつオレが撫でたよ?」
ムッとした阿部によると、オレはかなりの割合で奴の頭を撫でているらしい。それは学校だったり部活中だったり、はたまた試合中のベンチだったり。
オレはそんなつもりなかったんだけど、撫でられている本人が言うのだから本当なのだろう。
「なあ、なんで?」
「いや‥‥わかんねーけど。で、そっちは何かわかったのか?」
「全然。坊主頭撫でても何も楽しくねえし」
拗ねたような阿部の口調に気付かれないよう吹き出して、上半身ひねって後ろ振り返ると腕を引いて自分の膝に座らせた。
今度はオレが後ろから抱き締める形になるが、阿部は抵抗する訳でもなく、ただじっとしている。
「なんで撫でてたのか、やっぱわかんないけどさ」
「‥‥?」
「多分、阿部が好き、だから。ってコトでだめか?」
「は、ばっかみてえ」
あ、せっかくオレが恥ずかしくて必死の思いで告げたっていうのにこの反応かよ。ほんと阿部ってひでー奴。
「‥‥また撫でてんぞ」
「え?あ、ゴメン」
無意識って恐ぇ。なんて思いながら苦笑すると、阿部は頭に乗ってるオレの手を掴んで口元に持って行き、ちゅっ、なんて可愛い音を立ててキスした。
「なに、してんの?」
「‥‥いーんじゃねえの」
「なにが?」
「っオレも花井が好きだから、撫でられてやっても良いっつってんの!」
言うなり真正面を向いた阿部の表情はわからないけど、耳が赤かったから、オレと同じように真っ赤になっているんだろうと容易に想像できた。
君が可愛いからじゃない?
(もっかい、言って?)
(あほ。ぜってえ言わね)
今度は意識的に撫でてみようか、なんて。
+−+−+−+−
花阿お届け。
うちの子達は赤面症(笑)
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