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【1位】花阿
離れないように必死な口実
同意上での軟禁のお話
割とマニアックな内容
























オレ達は野球部を引退した。

卒業も間近に控えていた。

故に、

オレ達は長期休暇に入った。



チャンスは今しかない。














友達ん家泊まるから。

‥‥1週間、くらいかな。

バイトの金あるから大丈夫。

帰る時は連絡するよ。

ん、わかった。


じゃあ、いってきます。





もう高校も卒業、一応なりにも社会人というものになるわけで、さほど親は止める気もないようだった。まあ元から弟にべったりな分オレには無関心だったけど。


自転車をこいでる時、無性にワクワクした。

オレはこれから、期間限定で花井に監禁される。苦痛になど思うわけがない、その間はずっと花井の傍に居られるのだから。









色々と考えているうちに、花井の家に着いた。いつもの所に自転車を置いて、ドアの前に立ち、インターホンを押す。

ぱたぱたという足音を聞いて胸が高鳴る。花井が来る。カチャ、ドアが開いた。


「お、来たか」
「‥‥うん」
「入れよ、今ちょうど誰もいないから」


にこやかに招き入れられて、花井の部屋まで通される。本当に良いのか?と問われたから、しっかり頷いて見せた。





「百均で探したんだけど、こんなんで良いのか?」
「ん、サイズわかんないけど大丈夫じゃないかな」
「着けてみた方が早いか。じゃあ阿部、脱いで」


え、とオレが目を丸くしたら面白かったのか花井が笑った。その手に握られている首輪は本来ペットに着けるべきであって、この場に不似合いな筈なのに何故か違和感が無い。


「どうせなら本格的にやろうぜ。阿部に似合いそうな服、買ってきたんだよ」


ほら、と示された先には綺麗に畳まれた衣服。コスプレって訳じゃなさそうだけど、なるほど花井の趣味っぽい。





「ん、ぴったりだな」


良かった、と花井が嬉しそうに言うから、何故だかオレも幸せな気分になった。正直、着替えているところを目の前で見られるのは恥ずかしかったけど。



オレの首輪から伸びる鎖は、花井のベッドの柱に付けられていた。どうやらベッドとその周辺がオレの場所らしい。


「首、痛くないか?」
「全然へーきだよ」


確か、これをやろうと言い出したのはオレだったはず。でも何だか花井の方が楽しそうだった。
いや、オレも十分楽しいけど。





「‥‥鎖、短くないか」
「ダメか?」
「これじゃ立てないよ」
「それが狙いなんだけど?」


四つん這いで移動しろよ。そう言われて、はっとした。オレは監禁されてるんだから、あんまり自由に動いちゃいけないんだ。

わかった、頷いたら頭を撫でられて、傍に花井がいるんだから別に動かなくてもいっか、と簡単に解決した。





「‥‥あ、晩飯の時間だ」


ドアの向こうからおばさんの声がして、花井が立ち上がる。膝に座っていたオレはすとんと落ちて、ベッドに尻餅を突いた。


「飯食ってくるから、いい子にしてるんだぞ」


わしわし撫でられると、一瞬自分が犬にでもなった気分になる。
わんって返事したら花井はどんな顔をするのだろう、1人残された後ふと考えた。ちょっと面白くて笑った。













「あべー」
「‥‥はな、い‥」
「悪いな、起こして」
「大丈夫‥飯食ったのか?」
「おう。阿部の分も持ってきた」


抱き締められた感触で目を覚ますと、花井がご飯を作って来てくれていた。受け取ろうとしたらすぐに引っ込められて、首を傾げる。


「食わせてやるよ」


スプーン片手に、花井が笑った。







それから1週間、オレはずっと花井のベッドの上で過ごした。花井はまだバイトを続けてたから昼間は1人で留守番。それは寂しかったけど、帰ってきたときの花井の優しさで全部チャラだった。


花井はオレの身の回りのこと全てをやってくれる。

一口ずつご飯を食べさせて、綺麗に体を拭いて、寝るまで抱き締めててくれて、家族のいないタイミングを見つけてトイレも連れていってくれた。


オレはそれが嬉しくて、何ひとつとして花井に逆らわなかった。
頼まれたことも命令されたこともちゃんとやった。

そうすると、決まって花井が優しく頭を撫でてくれるのを知っていたから。








そして、とうとう今日が最後の日だ。花井はバイトを休んで、2人で片付けをすることになった。



「‥どうしような、この首輪」
「記念に取っておけば?」


冗談めかして言ったのに、花井が笑って頷いた。でもオレは内心それどころじゃなかった。


首輪を外された途端、何かそわそわし、落ち着かなくなる。







首輪を着けていれば、花井の傍に居られるのに。








「‥‥阿部?」


無言のまま、花井の背中に抱き着いた。目一杯、忘れないようにと花井の匂いを吸い込む。するとオレの気持ちを察したのか、花井が体を回して抱き締め返してきた。





これからもずっと傍にいるから。


耳には聞こえなかった言葉が、胸に溶けていく気がした。







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