チャンスだと思ったんだ
心のどっかで、何とか逃げられるだろうと甘い考えを持っていたのかもしれない。
車はどんどん進んで行く。
不安は募るばかりで。
「‥‥榛名」
「何だよ隆也」
「早く降ろせよ」
俺の台詞に反応して、とは思えないが、そこで突然車が止まった。
窓の外を見るとどうやら車庫の中らしい。暫くきょろきょろしていたが車のドアの開閉の音ではっとした。
榛名が、後部座席に来る。
「隆也」
「っ‥‥来んな!」
「俺が嫌いか?」
「大ッ‥嫌い‥‥」
暴れる俺を力付くで捩伏せて、押し出した榛名は笑っていた。
ぞっと背筋が凍る。
恐い恐いよ助けて花井‥‥!!
「‥や、だ‥‥はな、いっ!」
再びじたばた暴れ始めた俺を榛名は押さえ付けるでもなく、じっと見ていた。
ただ、その表情がひどく冷たかったことに無我夢中で暴れていた俺が気づくはずもなくて。
「隆也」
「‥‥ッ」
氷のような冷ややかさを帯びた声で名前を呼ばれて、恐怖に動けなくなった。
手が震える。
声が出ない。
涙が止まらない。
ぷつん。
そこで俺の意識は途切れた。
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