高まる感情、速くなる足
久しぶりに水谷と会っていたら、花井からの電話。
阿部がいなくなったらしい。
その震える声を聞いて、本当に手の掛かる人達だな、と立ち上がった。
「で、心当たりはあるの?」
「無いから、栄口呼んだんだよ‥‥」
目の前の花井はオレよりも大きい身体のハズなのに、今はすごく小さく見える。隣の水谷に視線をやると、慌てている様子。
オレがしっかりしないといけないみたい。
「阿部に電話してみた?」
「何回も掛けたんだけど、繋がらなくて」
「喧嘩は‥‥してないよね、昼間の様子だと」
こくり、と昔は坊主だった頭が上下に動いた。
しっかりしてよねキャプテン。
「水谷、何かわかる?」
「いや‥‥最近阿部と会ってなかったから」
「そっか」
どうしたものかと考える。阿部は少し前まで埼玉にいたのだから、この辺には詳しくないはず。だからって遠くまで行ってるとも思えない。
(じっとしてても始まらないか)
そう思って立ち上がると花井と水谷の2人分、視線がこちらに向いた。オレは口を開く。
「阿部を探しに行こう。東京にいるとは思えないから、埼玉に行ってみようかと思うんだけど」
「‥‥そうだな」
呟くように言って、花井が立ち上がる。
水谷も続いて立ち上がった。
電車に乗り、3人で色々話した。
とりあえず、3年間共に過ごした所を回ろうってことになったら、水谷がグランド行こうって言い出して、花井も同意して。
それからずっと花井はそわそわしていた。
まるで今すぐにでも走り出したいと言うように。
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