不幸って何なんだろう
阿部からプロポーズされて、次の日。
1日経って気付いたのは、普通俺の方がするもんなんじゃないかということ。
帰ったらちゃんと俺から言おう、そう決意して車に乗り込んだ。
「阿部、ただいま‥‥?」
鍵が開いていて、今日も怒らなきゃいけないのかと内心溜息を吐いた。しかし中があまりに静かで、不思議に感じつつ中へ入る。
「いねえの、か?」
部屋はそう広くない。ふざけて隠れているにしても人気がなさ過ぎる。
おかしい。そう思いながら全てのドアを開けて確認すると、やはり阿部の姿は無かった。
(待てよ、)
もう1度玄関に戻る。阿部の靴は綺麗に並んでいた。
「‥‥っ?!」
がたん、台所からそんな音がして行って見ると、コンロの鍋で味噌汁が沸騰していた。ふたが熱気のせいで床に落ちている。
(どういう、ことだ?)
状況的に、阿部はほんの少し前までここに居たのだと思う。だけど何か理由があって、部屋を飛び出したのだ。
靴を履くのもコンロの火を止めるのも忘れるくらい、慌てて。
混乱。
阿部の行きそうな所なんて‥‥
(さ、かえぐち)
未だぐちゃぐちゃの頭に上がったのは昼間の笑顔。あいつなら、手助けをしてくれるだろう。
栄口に電話をしている間、手の震えが止まらなかった。
夕方から降り出した雨は、すっかり本降りになっていて。
阿部、どこ行ったんだよ。
思い出すのは、朝見送られた時の笑顔だけで。
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