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我慢は得意じゃない(花阿)





「‥‥阿部?」
「何だよ」
「そんなにくっつかれると歩きにくいんだけど」


べったりと抱きついて来る相手に苦笑しながら頭を掻く。


今は夏休み、ということで我らが西浦高校野球部でも何かしようということになり、こうして墓地で肝試しをすることになった。

肝試しといっても墓地をぐるっと一周して出発地点に戻ると言うだけなのだが、誰が思い付いたのか所々に置いてある古くなって使えないボールやら何やらに名前を書いてこなければならないというルールがプラスされていた。



くじで二人組になったのだが俺は阿部とペアになり、今墓地を歩いている。


「ほら、ボール見つけた。名前書くぞ」
「ああ‥‥」


さっきから俺に抱きついて離れない阿部に苦笑して、あらかじめ持ってきていた油性マジックで2人分の名前を書いた。


「じゃあ次行くぞー」
「‥‥おー」


明らかに逃げ腰な阿部はまだ俺から離れる気はないらしい。もう気にすることも止めて進んだ。























「っし、これで最後か」
「もう戻れんだな?」
「まあな。じゃあ名前書いて‥‥っと」


最後は使い古したホワイトボードだった。近くに置いてあったペンでやっぱり俺が2人分の名前を書くと阿部はやっと離れた。俺らのくっついていた部分は汗でびっちょりで、夜風がよく通る。


「早く帰るぞ。風邪引きそう」
「うん。‥‥あ、待って」
「どうかしたか?」


わざとらしく笑いながら言うと阿部は一旦頷いたがすぐに足を止めた。何かと思って様子を見ているとぼそっと呟く。





「何かいる」





そう阿部が言うと同時、近くの草むらからざわざわと何かが動く音がする。そりゃあ始めは風のせいだと思ったけど、残念なことに風通しがよくなった筈のTシャツには一切風が届いていなかった。


「何‥‥?」
「‥‥‥」


ぎゅ、と再び阿部が俺に抱き着いた。大丈夫だから、と頭を撫でながら音のする方に近付く。



「花井、帰ろう」



そう阿部が微かに震える声で言った、その時。
























「ぐわあぁああ!」
「ぎゃははははあー!!」

「Σわあぁああ?!」
「‥‥‥っ、」
「あっ阿部!?」



お化け屋敷とかそういう所で、客をおどかそうとして出すような声で叫びながら飛び出してきたのは仲間達だった。


「お前等!」
「あー阿部気絶してる!」
「えっ?!」


おどかされたことを怒ろうと声を上げたが、田島の一言で慌てて自分に回っている腕の主を見た。


‥‥阿部が俺に抱き着いたまま気を失っている。





「ちびってたりして」
「馬鹿言ってないで手伝え。背負って運ぶから」
「つか阿部エロ‥‥」



水谷の台詞で沈黙。





そりゃあ今の阿部は目閉じてるし唇なんか薄く開けてて、うっすら汗もかいてて月明かりに照らされてるしオマケに完全無力だし、エロいっちゃ‥‥エロい。


って何考えてんだ俺!!!





ぶんぶん首を振って疚しい思いを振り払うと、自力で阿部を背負って騒ぎ立てる仲間達を無視し歩き始めた。





(コメント)
阿部がお化け屋敷とか本気でダメなら良いなあとか思いまして。
多分「怖い」って言えずに黙って花井に抱き着いてますよ。
ふふ、可愛い奴め(笑)

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