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小さくて大きな幸せ
(花阿)





「あーべーえ!」
「あべ、くんっ!」
「‥‥うるせーぞお前、らッ?!」


どさぁああ‥‥!


















「あっはっはっは!」
「笑い事じゃねーよ!もう机の周りに散らばった飴やらチョコやら拾うの大変だったんだからな!」
「まあまあ落ち着けって。アイツ等に悪気はなかったんだしさ」


ぽんぽんと背中を撫でてオレを宥めながら笑っている花井を睨む。コイツはちょうど栄口のところに行っていたから知らないんだ。

昼休みに自分の席で寝ていたオレの頭上からコンビニの袋いっぱいに入った菓子が田島達の手でぶちまけられたその光景を。



「誕生日祝ってもらって良かったじゃん。嬉しくねえの?」


嬉しくなくはない。けど、オレが何を望んでるかくらい気づけよ。
こんのバカはげ梓め。お前なんか出世しないで万年平社員だ。





「これ、そのお菓子?」
「‥‥おう。それ全部」
「すげー量だな」


隣に座っていた花井が、持ち帰ってきたビニール袋ふたつ(重いので分けた)の方へ移動した。1個もらって良いか?なんて言って中をごそごそ漁り始めた頃、オレは諦めてベッドに寝転ぶ。途端にやって来た睡魔に身を任せ、目を閉じると思ったより早く夢の中へ。















「‥あれ‥花井‥‥?」


目が覚めた時には体に布団がかけられてて、部屋は真っ暗だった。花井の姿を探すけど見つからなくて、何だか心細くなる。


「‥‥帰った、のか」


寂しいなんて思ってやらない。だってアイツ、オレの誕生日なのに何もしてくれなかったし。もう知らない。こんどからハゲ井って呼んでやる。





とりあえず、ベッドから降りて部屋の電気を付ける。すると机の上のメモに気が付いた。

『寝たみたいだから帰るな。また明日』



「っのバカ‥‥」


あぁムカつく。せめて一言おめでとうくらい書いてけっつの。ちくしょう、こうなったら田島達からもらった菓子食いまくってやる。

そうだよ自棄食いだ何か悪いか。



袋の中の菓子を、勢い任せに床に出した。広がる色とりどりの包装紙。さあどれから食べようか。





「‥‥‥‥ん?」


もう3個目のチョコを頬張りながら次に食べるのを探していると、何か菓子らしくない小さな箱を見つけ、手に取った。


「何これ‥‥?」


首を傾げつつ蓋を開けると、指輪がころんと入っていた。それはシンプルなシルバーリングで、指で触れればひんやりとしていた。誰かが間違えて入れたのかもしれないと、内側を覗き込む。


「んーと‥‥T・H?





‥‥‥‥‥‥!!」


そこに掘られていたイニシャル。数秒後にはっとして、直ぐさま携帯を掴んだ。

















阿部の家から帰って来て、飯と風呂を済ませて英語の宿題に取り掛かった。そこで携帯の着信音が鳴り、誰かと思えば阿部の2文字。


(‥‥起きたんだ)


ふと、寝顔を思い出しながら通話ボタンを押す。もしもし、と言えばどこか慌てたような声に吹き出しそうになるのを堪えた。


「な、なあ花井」
「どうした?」
「これ‥‥あの、」
「‥‥ああ、プレゼント。気に入ったか?」
「‥‥!‥」


驚くのが気配でわかって、気付かれないよう笑う。


多分、そのうち泣き出すだろう阿部を思い、オレは次の言葉を待った。





今日は君の誕生日、これからの日々をプレゼント。





+−+−+−
阿部誕。
花井→←←阿部と思わせといてちゃんと花井も想ってました。

あ、「T・H」は「Takaya・Hanai」です。「a」多いな(笑)


阿部はぴば!

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あきゅろす。
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