My Present@(田花)
「はーなーいーっ!!」
「うわっ、なに、田島?」
「今日も元気だなー」
昼休みに7組の面子が弁当を食べていると、花井の元へ田島がやって来た。特に珍しい光景でも無いので、阿部も水谷もまた来たのか程度にそちらを見る。
「今日は何したんだ?」
「んとな、お誘いに来た!」
「はあ?」
いつも通りの喋りっぷりに、頭に(?)の3人。それでも田島はニコニコと続ける。
「花井は今日のミーティングの後オレん家来ること!じゃね!」
気持ちいいほどびしりと言い切って、すたすた去って行く田島。
阿部と水谷が視線をやると、花井は固まっていた。
「今のってさあ‥‥」
「お誘いつーより命令だよな」
「‥‥‥‥」
「大変だな、キャプテン?」
阿部の一言で、花井はがくりと項垂れた。
そして放課後。
今日はミーティングのみの日なので、それが終わると部員達は各々帰路につく。
その中で、花井だけがどこか浮かばない顔をしていた。
「花井どしたの?」
「察してやれ、栄口」
いつもと様子の違う花井を見て首を傾げる栄口に、事情を知っているらしい泉が言う。
「花井っ、帰ろ!」
「‥‥おう」
(ああ、そういうことか)
納得して苦笑いを浮かべる栄口も気にせず(花井は気にしている余裕もなさそうだ)、2人は部室を出て行った。
「ただいま!」
「お邪魔しまーす」
「あ、今日は皆いないから自由にしてていーよ」
どこか嬉しそうな田島の台詞に頭痛を覚える。田島の家に来て、2人だけで、何も無いはずが無い。いや、恋人同士なのだからそこに何ら問題はないのだが。
(ただ、なあ‥‥)
相手はあの田島だ。そういうことをした次の日の練習に支障が出るぎりぎり位にはなる。というか満足するまで放してもらえない。
その度に阿部を始め他の部員達に文句を言われたりからかわれたりするのが嫌で仕方なかった。
原因である田島というと、花井とは逆でいつもの倍近く元気になっている。そこが1番ムカつく。
「花井?」
「ん、何でもない」
そんなことを考えているうちに、田島の部屋についた。顔を覗き込まれ、それでも好きなんだよなあと思いつつ首を振る。
「まあいーけど。ね、花井。今日何の日か知ってる?」
「今日‥‥?‥‥‥、あ!!」
忘れてただろ、と田島が膨れる。そうだ。今日は田島の誕生日だった。
「ご、ごめん!忘れるつもりじゃなかったんだけど‥‥」
「ん、良いよ。花井の時も何もしてないしな」
とりあえず怒ってないらしい様子にホッとする。でもすぐ後、けどさ、と続けた田島に首を傾げて。
「やっぱり誕生日に何もないのも寂しいから、オレのお願い聞いてくれる?」
「おう、良いよ。忘れてたオレが悪いんだし」
本当?と聞き返してくる田島に頷くと、心から嬉しそうなその表情にこちらまで嬉しくなった。
「じゃ、ちょっと待ってて」
「?」
立ち上がった田島に言われて、その場に座ったままでいると机の引き出しから何やら2本の瓶を持ってきた。
中には、それぞれ紫とピンクの液体。この色、いかにもって感じじゃねえか‥‥
「どっちが良い?花井」
「‥どっち、って‥」
「特別に選ばせてあげる!」
選ばせてあげる!じゃないっつのバカ!どっち選んでも危ない匂いぷんぷんすんじゃねーか!
‥でもなあ‥選ばないといけないんだろ?
「じゃ、じゃあ‥こっち」
覚悟を決めて、オレは2本のうち1本を指差した。
――続く
(次ページは紫ver.です)
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