魔王様ご一行
さん
膝を抱え込むように座っている吉右衛門は、小さな声で言った。
「すみません、急に成長しちゃって……お姉さん」
「お姉様、よ」
「あ……はい。お姉様」
吉右衛門がわずかに纏う破れた服を掴み、莉々子は言った。後ろから見ている朱里に表情はわからないが、きっと恐ろしい剣幕に違いない。吉右衛門は、素直に従った。
それを聞くと、莉々子はパッと掴んでいた布片を放した。
「ま……とりあえず隼人の服で代行しちゃいましょうか」
「持って来るから、ここでおとなしく待っててね」
「はい、お姉様」
2人がリビングを出るまで、吉右衛門は笑顔で手を振った。
「……まったく吉右衛門ったら、あたしより先に大きくなるなんて」
階段を上りながら、朱里は呟いた。
「仕方ないんじゃない? そういう性質なんだろうから」
「お姉……あの異常な成長にツッコまないんだね」
「ツッコミはしないけど、異常だとは思うわね」
ドアを開け、隼人の部屋に入る。素早くクローゼットから適当に選んだ服や下着を取り出し、朱里の方に投げて寄越す。
そんな莉々子の背中を見つめながら、なにげなく朱里は切り出した。
「……お姉。吉右衛門を拾った時のこと、話したの覚えてる?」
「確か、有栖川4丁目の神社で拾ったのよね? 綺麗なお姉さんに、そこに赤ん坊を置いて来たって言われたんでしょう?」
拾った時はよく考えなかったが、吉右衛門を置き去りにしたその女性は、彼と何らかの関係があるだろう。もしかすると、親子ほどの──
「うん。その女の人なんだけどさ」
足元近くに落ちたTシャツを拾い上げ、朱里は続けた。
「今思えば、スゴく似てたんだよね……レインに」
********
「……ハズレか」
「ハズレだな。レインを捜すなら、金の装飾がついたもっと豪華な扉を捜すのだ」
牢屋を抜け出した隼人は、目につく扉を一つ一つ開け、レインを捜していた。
時間がかかり、人に見つかる危険もあるためかなり効率が悪い方法だが、他にどうしていいかわからない。とりあえず、その行動繰り返すことにした。
そして何度目かの扉を開けた時──
「あ……っ」
──ビンゴだった。
ゆったりと椅子に腰掛けたレインが、男とチェスをしているところだった。
「! ──何者だ!」
「待て」
立ち上がり、素早く腰の剣に手を伸ばした男を、レインは止めた。
「この者は私との謁見を望み、ここまで来たのだろう。許す」
レインの言葉に、男は驚きを隠せないようだった。ガーネットの瞳が、戸惑いに揺れる。
「しかし……っ」
「私が許すと言ったんだ。お前は下がれ」
「……わかりました」
しぶしぶといった感じで男は言うと、一礼し、静かに部屋から出て行った。
そうして部屋には、隼人とシャミィとレインだけになった。
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