魔王様ご一行
よん
「ただいま〜」
妹、朱里の声だ。
「ただいま……。あれ、誰かいるの?」
続いて姉、莉々子の声。リビングに向かって声をかけてくる。
隼人は、とっさに目の前にあったタオルをレインの頭にかけた。
そしてちょうどその時、朱里がリビングのドアを開けた。
「あ、お兄。今日は早いね〜」
「あら、隼人。帰ってたの」
朱里はランドセルをソファーに置くと、すぐに冷蔵庫に走った。
「あれ。友達連れてくるなんて珍しいね」
レインに気づき、朱里はこんにちは、と挨拶をした。
「いや、こいつは……」
「友達連れてくるなら前もって言ってくれないと」
そう言い、莉々子はふう、と軽く溜め息を吐いた。
「お姉。これには事情があってだな……」
「ジュースどうぞ!」
朱里がレインにジュースを差し出した。
「何もないけど、ゆっくりしてってね」
「全くだ。本当に何もないな」
その言葉に、莉々子と朱里は動きをピタッと止めてレインを見た。
「俺様の寝室より狭いし、殺風景だし。だいたい不味っ。よくこんなの飲め──」
隼人はレインの口を塞いだ。この口はロクなことを言わない。
「隼人」
「は、はい?」
莉々子に呼ばれ、隼人はぎこちなく返事をした。何を言われるのか冷や冷やする。
「面白い友達ね」
莉々子は笑っていた──否、それは見かけだけ。朱里にしても同じだった。自分のジュースを入れたコップを、今にも割りそうだ。
彼女達の黒いオーラが見えるのは、隼人だけだろう。
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