魔王様ご一行
ご
「なんだ?」
なんとなく気になり、隼人は庭に飛び出した。と──
「シャミィ!」
隼人の目に飛び込んで来たのは、倒れている白い猫。
雪のような毛並みには、ところどころ黒く焦げた痕が見えた。そしてその傍らに、刀を持った青年──
「お前、さっきの……」
「魔王、女王を保護してくださったこと、礼を申し上げます。ですが……」
青年はゆっくりと振り返り、隼人に刀を向けた。
「魔王に仇なす者の味方は困りますね」
「仇なしてるのはアンタ達」
いつの間に隼人の肩に乗っていたのだろう。メデはそう言い、青年を睨んだ。
「アンタ達はレインを表舞台に引きずり出して、事を荒立ててるんだから」
「ふんっ。世界平和のためなら何だってするよ」
そう言ったのは、今朝、隼人に銃を発砲した失礼な少年だった。
「女王は返してもらうからね」
「あのなぁ。あれは女王じゃなくて、俺の姉であって……」
しかし、隼人の発言は無視され、メデと少年は言い合う。
「女王を半魔に渡すわけにはいかないよー。ついでに言うと、魔王も渡さないから」
「そんなこと言って、千年前は守れなかったクセに」
「貴様ら……我が輩をナメるなっ!」
少年の言葉に反応したように、シャミィはゆっくりと体を起こし、立ち上がった。
「これでも四天王No.2に仕える身……」
「No.2かよ」
「仕える中でもNo.2だからね」
「ごちゃごちゃうるさいわっ」
隼人とメデの小言に、シャミィは声を荒げた。そして、体が光り、馬ぐらいはある大きさに変化した。
そこには、愛らしい子猫を思わせる普段のシャミィはなく、荒々しい獣の姿──
「今度は必ず守る! 貴様ら全員、跡形もなく消してやるわっ!」
──一瞬だった。
シャミィの体を青い光りが纏い、それが半魔の2人を飲み込んだ。
くぐもった声が聞こえ、光りが晴れた時には、2人の姿はなかった。
そして、ぐったりしている子猫──
「シャミィ!?」
隼人は駆け寄り、シャミィを抱き起こした。
「バカッ。真の姿で、魔力を使うとは……」
「おい、シャミィは大丈夫なのかよ!?」
家から飛び出して来たクラドに隼人は訊いたが、返答がない。
「何とか言えよっ」
「言いませんでした? 魔力を大量消費したら、死ぬと」
「そんなあっさり言うなー!」
隼人は叫び、クラドはため息を吐いてシャミィの首をくわえた。
「どこ行くんだよっ」
「治療をします。肉体が消滅していないぶん、まだ望みはありますから」
クラドはズルズルと乱暴に、だけど優しくシャミィを引きずって行った。
「大丈夫かな……」
隼人の肩の上で、メデは小さく呟いた。
「心配か?」
「一応、兄だからね」
そうメデが答えたのを聞き、前から気になっていたことを思いだした。
「てかお前さ、シャミィの前じゃないと『どーでもいいけど』って言わないんだな」
「ひねくれ語尾だから」
「シャミィの前ではひねくれ者って? 素直じゃないんだな」
「素直じゃないのは、シャミィだよ」
メデは、小さく言った。
「レインのこと、本当は王として認めてるのに。わざと反対のことを口に出してさ」
「そういうお前は?」
隼人の問いに、メデはきょとんとしたが、
「誰が王になるかなんて、興味ないよ。どーでもいいけど!」
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