魔王様ご一行
よん
「マガルギ様が魔王になるのを嫌がった人物──」
どこからともなく、隼人の問いに答える声が聞こえた。
「……かもしれないね。どーでもいいけど」
現れたのは、メデだった。門をくぐり、ゆっくりと近づいて来る。
「メデ。今までどこにいました?」
「カカロン様に救援要請。シャミィじゃ頼りにならないからね。どーでもいいけど」
「貴様……隼人から聞いたぞ」
シャミィは鞄から体を半分乗り出した状態で、メデに言った。
「やたらめったら炎を吹くなっ。消滅したらどうするつもりだ!」
「なに。心配してたの? どーでもいいけど」
「ち、違うわ!」
シャミィは必死になって弁解するが、本当に心配してるんだろう。
「素直じゃないんだから」
隼人はそう言って笑った。
「わ、笑うな! もういいっ。トイレに行って来る」
そう言い、シャミィはスルッと鞄から抜け出した。
「トイレは家の中なんだけどなぁ」
「外でするんじゃない? 猫だもの」
莉々子は普通に言い放った。
「ま、とりあえず家入ろうか」
玄関の扉を開けると、当然のように莉々子と朱里が先に入った。そのあとで、隼人はクラドとメデを見、中に入るよう促した。
「ところでメデ。カカロン様に救援要請とは、どういうことですか?」
「桜川家は、レインの新しい居住地だから、半魔に狙われてるし」
「おいおい、誰が狙ってくるんだよっ」
大変な内容を冷静に話しているクラドとメデに、隼人は言った。
話を中断する形になってしまい、クラドは少しイラだったようだが、すんなり説明してくれた。
「半魔は、魔族と人間の血を引く者です」
「ハーフエルフみたいなもの?」
「朱里、ファンタジー小説の読みすぎよ」
莉々子はそう言ったが、魔界や魔王というファンタジーが現実に存在してるのだ。そういうのも、あり得るかも──
「まさか、そいつら嫌われてたり……」
「してません。みんな普通に接してましたよ」
「過去形ってことは何かあるんだな」
「確かに今は魔族より位が低いですが……人間よりはマシな扱いを受けてますよ」
クラドの言葉で、アドリーンとカデシュのことを思い出した。彼らは人間だ。
「……人間って、酷い扱い受けてんのか……?」
「ワタシはなんとも言えません。魔獣ですから」
恐る恐る聞いた隼人に、クラドはそれだけ答えた。
「ねー。話を元に戻そうよー」
「ああ、そうだったな」
朱里に言われ、隼人は頷いた。話が脱線するのは、今に始まったことではないが。
「単刀直入に訊くけど、マガルギが王になるのを嫌がったのは誰だ?」
「……半魔ですよ。彼らは、レインを魔王に望んでるのです。昔から階級を定める案がちらほら出てましたから」
「その階級ってのに、問題あり?」
「魔族第一。半魔は忠実なる下部。人間はそれ以下です」
「それって、王の命令?」
「いいえ。先代は平和主義だったんですが、女王様が……」
次々と質問に答えていたクラドだが、急に黙り、庭の方を睨んだ。
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