魔王様ご一行
に
「あら、もう帰ったの」
「お兄、おかえり〜」
「ああ……ただいまー……」
けっきょく学校へ行かずに帰って来てしまったが、いつも通りの莉々子達の対応に、隼人は拍子抜けた。
いろいろ言い訳を考えていたが、その必要はなかったようだ。
「てかさ。なんで2人ともまだ家にいんの? 学校は?」
隼人が家を出てから、裕に1時間は経っている。しかも、莉々子達がいるのは、玄関の前。
朝となんら変わっていない。
「それなんだけど、犬さんが家を離れちゃダメって」
「犬……?」
「お久しぶりですね」
凛とした声が聞こえ、その主を探すと、目についたのは、1匹の柴犬。シャミィの兄だという、あの犬だった。
「可愛い犬さんの言うことだもん。聞かなきゃねー!」
「……少し放して頂けると嬉しいんですが」
「やはり貴様も、下界では犬扱いされるな、クラド」
朱里に抱きしめられているクラドを、シャミィは鞄の中から面白そうに覗いた。
「本来の姿だと、下界では魔力を消費しますから、仕方なく」
「本来の姿?」
「我々は『魔』の存在だから、体には魔力が流れてる。本来の姿だと、魔力を余計に消費してしまう。体が大きいのでな」
「魔獣や魔族は、肉体的エネルギーと、魔力である精神的エネルギーがあるのです。どちらを使い過ぎても倒れます」
「ふーん。使い切ってエネルギーがなくなると、どうなるんだ?」
「死にます」
「はっ!?」
大変なことを平然と言い切ったクラドに、隼人は思わず声を上げた。
隼人自身、そんな重大なことになるとは思ってなかったので、軽く質問したのだが。
「人間も、エネルギーを使い過ぎると、倒れるでしょう」
「まあ、そうだけど……死にはしないよ、すぐに」
「肉体的エネルギーは大丈夫だがな」
ふんっとシャミィは鼻を鳴らした。
「精神的エネルギー……魔力はそうはいかん。一気に使うと、存在が消滅する」
「この世界で問題なのは魔力でしょう。大量に消費しても、補給できる場所がありませんから」
そこまで聞いて、隼人は今朝のメデを思い出した。炎を吹いたのだ。あれは、魔力を消費してるんじゃ……
「おいおい、ちょっと待てよ。じゃあメデは……」
「心配するな。多少なら休めば回復する。命に関わるのは、一気に使った時だけだ」
「そっかぁ」
それを聞き、安心した。
「まあ、多少でも疲れることは疲れるがな。貴様、レインと空を飛んでただろう。あれも魔力を使ってるんだぞ」
「あ……」
シャミィの指摘に、隼人はハッとした。
慣れない世界で力を使わせて、彼には負担になっていただろう。
「文句言いながらでも、けっきょく働いてくれてたもんなぁ」
「こき使い過ぎたかしらね」
「買い物とか猫探し……無理させちゃったね」
レインに申し訳なくなって、隼人達は溜め息を吐いた。
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