[通常モード] [URL送信]

魔王様ご一行


よん

「で、隼人。早く学校に行きなさいよ」

「イヤだ!」

メデが去った後、莉々子にそう言われ、隼人は即答した。

莉々子を見て逃げ出したにもかかわらず、しつこくコッソリと電柱の影に隠れていた少年だ。隼人が一人の時を狙って来るかもしれない。

学校より、莉々子のそばにいた方が安全だ。

「絶対イヤだ! 死んでもイヤだ!」

「じゃあ死ぬ?」

「う……」

そう言われては、反論できない。莉々子は『やる』と言ったら、それが鼻から牛乳だろうが何だろうが確実にやる、有言実行な女だ。

ある意味尊敬するが、それは時として危険。

莉々子のそばにいると逆に命が危ういと判断し、隼人は学校へ行くことに決めた。

鞄を持ち直し、隼人はチラッと朱里を振り返った。彼女はニコニコ笑って手を振っている。

隼人が危険な目に遭うのを、とても楽しみにしていそうだ。

不快だ。そして不安。



********



「おい」

周りを警戒しながら歩いていたところを、急に声をかけられ、隼人は心臓が飛び出そうになった。

声の主は、シャミィだった。少年じゃないとわかり、隼人は安堵の息を吐いた。

「……お前、魔界に帰ったと思ってた」

「まだ帰らん。それより、メデが何かやらかしたか?」

“メデがやらかした”と聞いて、今朝の炎吹き事件を思い出した。

「変に絡んで来た奴に、炎吹きかけたな」

「アイツら……やっぱり、貴様の家に来たか」

「お、おいっ。何か知ってるのか?」

「教えてほしいか?」

シャミィは不敵に言った。彼の目的がわかった隼人は、溜め息を吐いた。

「……何が望み?」

「缶詰」

隼人はシャミィを鞄に入れ、歩き出した。

「あ〜、楽だな」

「……ったく」

鞄のチャックを少し開け、そこからシャミィは顔だけを出している。

それから隼人達はコンビニへ行き、一番安い缶詰めを手に取った。

「これでいい?」

「違う違う。隣りにあるやつだ」

マグロ入りの、少し値段が張るものだった。

「お前なっ」

しばらく財布とにらめっこした後、隼人は溜め息を吐いてそれを手に取った。



********



「さあて、話してもらおうか」

お気に入りの──レインが封印されていた桜の木の前に着き、隼人は言った。

「まず食べてからだ」

そう言われ、仕方なく缶詰を開け、シャミィの前に差し出す。

「最近何も食べてなくてな」

言いながら、美味しそうに高級缶詰めを食べる。そういえば、前にも同じ台詞を言っていた。

「苦労してんだなー」

「全くだ。レインが復活したせいで、余計に苦労が増えたわ」

嫌味で言ったつもりなのに、真面目に返され、隼人は少し戸惑った。

そしてふと、ずっと訊きそびれていたことを思い出した。

「……そういえばさ、レインが封印された理由、聞いてないんだけど」

ピタッとシャミィの食べる動きが止まった。

「どうした、缶詰が喉に詰まった?」

「おバカ。そんなヘマするか」

シャミィは隼人に向き直り、そして、ゆっくりと話し出した。

「……レインは、先代の王と女王の子どもではないのだ」


[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
無料HPエムペ!