魔王様ご一行
いち
アドリーンに案内されて着いた未開の森は、ジャングルという風ではなかったが、木がうっそうと生い茂る、深い森だった。
「ここだよ」
その中でもひときわ大きい木の前にアドリーンは立った。
幹をノックすると、スゥッと扉が現れ、彼女は開けた。
「カデシュ先生、ただいま戻りました!」
「アドリーン、どこに行っていた?」
男の声が聞こえた。なんとなく威圧感がある。
「あ、えっと……天使さんを連れて来ました」
「……天使?」
隼人達はアドリーンに続いて中へ入った。木の中だが、普通の家と変わらない。
扉の近くにあるテーブルのそばに、銀髪の男が立っていて隼人達を一瞥した。おそらく、彼がカデシュだろう。
「こ、こんにちは〜」
無表情で反応がない。だが、ふと驚きに表情を変えた。
「レイン様」
カデシュの呼んだ名前に、隼人は呼吸を停止させた。
「レインッ!?」
彼らは一斉にレインを見た。
「カデシュ殿!」
レインが手を挙げて答えた。カデシュと握手を交わす。かなり親しそうだ。
「お久しぶりです。お元気でしたか」
隼人は肝を潰した。レインの、あのレインの口から敬語が!
「どうしよう、レインが礼儀正しいよっ」
「世も末ね」
「どうなってんだ?」
この魔王は偉そうであっても敬う気持ちはないと思っていた。
「相変わらずですよ。……この者達は、レイン様のお供ですか?」
「違うよ。桜川朱里。レインはあたし達の家に居候中」
やっと隼人達に興味を示したのか、カデシュはそう訊いてきた。訊ねた相手はレインだろうが、変わりに朱里が答えた。
「おいっ!」
平然と、しかも少し偉そうに答えた朱里に、レインは焦った風に言った。
「敬語を使え、敬語! もっと敬えっ。偉大な大賢者様々だぞ!」
「そんなの関係ないよ〜だ」
「だーっ!! カデシュ殿はな、俺様よりも長く生きておられる、神の上のお方だ!」
「ふーん。長く生きてるってどれぐらいなの?」
「一万……」
「「「えっ!!」」」
カデシュの答えに、隼人と朱里、そしてなぜかアドリーンも同時に驚きの声を上げた。
「レイン、お前はいくつなんだ?」
「俺様は2300──」
「いえ、3300歳です。封印されてましたので」
カデシュの訂正に、レインは固まった。
「……そんなに封印されてたのですか」
カデシュは頷いた。
「1000年、か。国も様変わりしたでしょうな」
「……ええ、とても」
2人とも、どことなく哀しそうに言った。
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