魔王様ご一行
よん
「あーあ。せっかくのフリーパスなのに」
「なにがフリーパスだ! あの化け猫め!」
「猫さんのこと悪く言わないでよっ」
「俺様があいつをどう言おうが勝手だろっ」
「でも、フリーパスって無料でしょ」
言い争いをしているレインと朱里に、莉々子は言った。
「無料をムダにするなんて〜!」
「うるせぇ! タダより怖いもんはねぇんだって知ってるか!?」
レインの言葉には、実感がこもっていた。彼はついこの間、悪徳商法に引っかかったのだ。
最もそれは、レインの一方的な言い分で、本当に悪徳商法だったのかは謎だが。
「2人とも、喧嘩しないで、これからどうするか考えましょ」
莉々子は珍しく正当な意見を言った。いざとなれば、姉はやっぱり頼りになるな、と思いながら隼人も言う。
「そうそう。早く戻らないと学校遅れるし。……まあ、もう遅刻かもしれないけど──」
「あなた達、誰?」
突然話しかけられ、隼人はビクッとした。声がした方を振り返ると、紫色をした髪の少女が立っていた。
隼人と変わらない歳だろうと思えるその少女は、髪の両サイドを赤い髪飾りで留めていて、その手には箒を持っている。
「……おい、あの子は何なんだ?」
「俺様が知るか!」
「魔族とかかしら。変わった髪の色してるわね……瞳の色も」
「いや、普通に人間だと思うが……」
「きっと掃除しに来たのね!」
「こんなとこまでか?」
確かに箒を持っているが、街は遙か遠くだ。
「あの〜」
再び彼女に話しかけられ、隼人達は会話を中断した。
「あなた達、この辺では見かけないけど……」
「えっと、俺達は──」
「あたし達、天から降臨したのよ!」
なんとか先ほどの現象を説明しようとしたが、朱里が割って入り、そう言った。
「へぇ、そうなんだ!」
納得したように少女が頷く。信じんのかよ! というツッコミはなんとか呑み込んだ。
「やっぱり! 天の柱が現れたからそうかと思ったの!」
「天の柱……?」
「あ、ううん。こっちの話っ」
えへへ、と少女は笑った。
「あ、私、アドリーンっていうの。みんなからアドって呼ばれてるの。よろしくね、天使さん達」
「「天使さん達!?」」
思わず隼人とレインは叫んだ。どうやら少女──アドリーンは、朱里の話を本当に信じてるようだ。
「あの、俺達は天使さんじゃ──」
「莉々子よ。よろしく」
「あたしは朱里。よろしくね」
否定しようとした隼人を遮り、2人はさっさと自己紹介を済ませた。
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