魔王様ご一行
さん
「朱里。隠してたら後々辛いぞ。話せることなら話せよ」
「ほ〜らほらほら、お兄に全部話してみなさい? ……いってぇ!? 殴るんじゃねえ!」
隼人の物まねをしたレインを、容赦なく朱里は殴った。
「似てないしキモイよ」
「このクソガキッ! 俺様が心配してやってんのに!」
言いながらレインは自分で頭をさすった。それを見て、朱里は軽く溜め息を吐いた。
「……あのね。実はね、拾ったの」
そう言って、机の下からダンボール箱を引っ張り出した。
「猫?」
中には白い猫がちょこんとおとなしく座っていた。真っ白だ。雪のように白い、本当に美しい猫だった。
「綺麗な猫だな」
思わず隼人は、猫を抱き上げた。が、レインは猫を見て距離を取った。
「何だこいつ? 猫……じゃねぇ!? 何だこの生物!?」
「猫じゃなかったら何なんだよ」
「朱里、こいつは社会の役にはまるで全く全然立たないから拾うなっ!」
「めちゃくちゃ言うな、お前」
「役に立つよ。ほら説明書にも、疲労回復、腰痛、肩凝り、ストレス、神経痛、冷え性に聞くってきっちり書いてあるじゃん」
ダンボール箱から1枚の紙を取り出した朱里はそれをレインに渡した。
「確かに書いてある……が、書いてあるも何もそれ猫だろ! 説明書があることも謎だろ! そもそも猫に神経痛や冷え性が治せるかあ!」
レインは少しヒステリック気味になって叫んだが、隼人は治せるなら是非とも疲労回復をお願いしたいと思った。
「名前付けなきゃね」
「名前なんか付ける必要ねえ! そいつはなぁ……」
「やっぱり定番のポチかな」
「俺の話を聞けー!」
レインの意見はことごとく無視された。
「そりゃ犬の定番だろ。猫はタマとかトラ」
「あ、ナイチンゲールってどう? 鬼瓦屋彦左衛門とか」
「定番でもなんでもなくなってるし。シロはどうだ?」
「じゃあ──」
「シャミィだー!」
レインは、朱里が言いかけたのを無視して叫んだ。
「あ、それいいかも」
「いいかも、じゃねー! 元々そいつはそういう名前なんだよっ!」
「レイン、この猫知ってんのか?」
隼人が訊くと、レインは言葉を詰まらせたが、こう言った。
「……そいつは、俺様の家来だ」
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