魔王様ご一行
いち
「全部買えたか?」
スーパーから出てきた隼人を待っていたレインは、そう声をかけた。
「おっけ。ニンジンにジャガイモ、ちゃんと買えた。帰ろうか」
そう言うと、レインは隼人を抱え、空高く飛んだ。もの凄い速さで家に向かう。
「ばっ、バカッ! スピード落とせっ! つーか一回止まれ!!」
「あ? もう持たねーのかよ、弱ぇな。これだから人間は……」
レインが止まると、隼人は激しく動く心臓を落ち着かせようと、思いっきり息を吸って吐いた。まったく、人間を魔族と一緒にしないでもらいたい。
「しかし、なんでこんな遠いとこまで買い物に行くんだ?」
「……なんか今……聞き捨てならない言葉があったような……」
「あ?」
「お前が! あんな騒ぎ起こすから行きにくくなったんだろ!」
行きつけの地元である有栖川のスーパーであんな騒ぎを起こしたため、隣りの聖地区までわざわざ買い物に行くことになったのだ。
「っあー……仕方ねぇだろ? やっちまったもんは」
「そういう問題か! どうしてくれんだ? これからもずっと、買い物はお前に付いてきてもらうぞっ」
「わりぃ、俺様、耳遠くなっちまったみてえだ。ゆ〜っくり、もっかい言ってくんねぇ?」
「お前なっ」
「冗談だ。居候させてもらってるからな。困った庶民を助けるのも、王の仕事だし」
そう言ってレインは、フッと笑う。意外に律儀なんだな、と隼人は思った。普段はとても偉そうなのに。
「んじゃ、早く帰ってWiiでもしよーぜ!」
「だ、だ、だ、だから速度を速めるなぁーっ! つーかWiiなんか持ってねぇーってば!!」
隼人の叫び声が空に響く。再びスピードを速めたレインは、桜川家へ真っ直ぐに飛んだ。
そんな2人を、地上からじっと見ている者達がいた。
「魔王様、発見です」
「おバカだな。魔王じゃない。我が輩達の主はあいつではないぞ」
そんな会話をしていると、電柱から別の声が聞こえた。
「そんなことより、誰がレインに近づくか早く決めよ? どーでもいいけど」
「どーでもよくないわ! 貴様はいつもいつも……危機感を持て!」
「では、作戦Eを決行します」
「いきなりだね。頑張ってシャミィ。どーでもいいけど」
「作戦Eは、あなたにかかっているのです。というか、あなただけしか動く必要ないですが、シャミィ」
「ふんっ。一人で十分。我が輩の力で、あの偽物を地獄に放り込んでやるわっ」
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