誑かした、
嘘つき。
もう、君を信じないよ。
誰が君をたぶらかした?
―ガっ!!ドがっ!!
「やめて!止めてっ!!」
―ドゴッ!!
「お願い!!!」
「うるさい!!」
―ガっ!!
おかしい。
これは、何だ?
変な男と君が裏庭で話しているのを見た。
気がついたら目の前には血だらけの男が君を僕のトンファーから守っていた。
僕は君を殴ろうとした。
一番傷つけたくない人を・・・
我を忘れて傷つけようとした。
君をかばった男は倒れた。
僕はそいつを咬み殺そうとした。
それを止めようとする彼女を黙らせようとした。
君は彼に呼びかける。
何度も何度も彼の名前を呼んで泣いている。
イライラする。
僕の名前以外呼ぶな。
約束だったじゃないか・・
群れない。そう言ったじゃないか・・・
僕を不安にさせないって、言っただろ?
僕は倒れる男を風紀委員にまかせて彼女の手を引き応接室に行った。
ソファーに座った彼女は泣いている。
ただただ、泣いていた。
分からない。イライラする。
「うるさい。」
そう言えば彼女は僕に目を向けた。
泣くのを必死に我慢していた。
それでも、眼には涙が溜まる。
その眼差しに愛情などない。
敵意のある眼。
やっぱり、嘘だ。
でも、これでわかったでしょ?
嫌いになったでしょ?
愛なんかなくなったでしょ?
「嫌いっ!!雲雀何か嫌いだよっ!!」
「そう。」
ああ、名前を咬み殺したい。
今とてつもなく君を咬み殺したいんだ。
思考だけじゃ止まらなくて体も動いた。
「僕のモノでないなら。」その考えが頭を過る。
トンファーを君に振りかざした。
その前に君が僕に抱きついた。
いつも、抱きつかれてばっかりだ。
いつも、丸めこまれてばっかりだ。
疲れたよ。
「嫌いなのにっ、、、愛してるの!!!」
「何それ、解んないよ。」
「同じよ、雲雀と同じっ」
「僕と・・・」
思い出した。僕は君と同じことを言った。
そして君を泣かせた。
嫌いだけど愛してる。
傍にいるだけでいい。
傍に居たい。
そう思ったんだ。
あの時、君の哀しむ顔を見たくないと思った。
なのに、僕は君を傷つけた。
僕の方が嘘つきなのかもしれない。
「愛してる。」そう言ってまともに愛せた事がない。
「あの人は図書室に参考書を置いてった私に届けてくれたのっ!!雲雀が見たら不安になるかと思って裏庭で渡してくれたの!!」
「何で名前がそこまで、」
「雲雀が哀しむ顔を見たくなかったからだよ!!」
「ボクがっ?」
「馬鹿っ!!馬鹿ぁ!!」
どん、どんて小さな手で叩かれた。
痛くないけど、痛いや。
凄く、痛い。
そんな君を強く、強く抱きしめた。
強く強く抱きしめて、君の唇に触れた。
戻れない、戻れない、愛し方はまだ、解らない。
―君の涙に知らされた