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:9 蜂蜜漬けの罰をどうぞ




あれ?あたしは何でこうなった?そうだ、そうだ!七不思議を解決するために獄寺を伴奏者席に座らせて、近くにお化けがいるから危ないと思い離れようとしたら体が動かなくて力が入らなくなったんだ。不快な音楽の制だと思う。たぶんこの曲はあたしの為に弾いているんだ。嫌な意味でのあたしの為に。
意識が遠のくのと同時に昔の自分になっていた。
今では絶対に着ない可愛いひらひらの服を着てお父さんがお姉ちゃんとあたしと一緒に遊んでくれてお母さんがそれを縁側に座って微笑ましく見ているんだ。そのうちに隣の家のツナとツナの母上も来て一緒に遊ぶんだ。楽しかったなあ。きゃはきゃはと笑いあっていたら場面が変わって玄関の前に1人で立っていた。頬を流れているのはなんだ?どうしてあたしは此処に居る?皆はどこにいるの?

あぁ、あたしはあの時置いて行かれたんだ。

お父さんが一番最初にお姉ちゃんを連れて仕事に出て、お母さんも後を追いかけて行ってしまったんだ。

「ツナ君達を守ってあげて。美夜ならできるよね?」

そう言って苦々しい顔をしてあたしの頭を撫でて母さんはこの玄関を振り返りもせず出ていったんだ。何が1人で大丈夫だばかやろー!お前の制であたしは馬鹿になったんだ。雲雀からめちゃくちゃ馬鹿って言われんだぞちくしょー!全部お前の制だかんな!

「何かあったらすぐに電話するのよ?」

そんな事も言われたっけなあ。結局一度も電話しなかったけどさ。普通親の方から電話してこない?着信一度もないんだけど。流石のあたしも結構つらいだろ?携帯をお姉ちゃんが手に居れてからは電話があったな。何だかんだ言ってお姉ちゃんが一番心配してくれていた気がする。思考はこうも平然としているのに目からはポタポタと水が垂れる。表現が汚いけどそんな感じなんだもん。

―ピンポーン

インターホンが鳴ってあたしはなんも返事してないのに勝手に玄関のドアが開いた。入ってきたのはツナで、一歩踏み出したと同時に転んでいる。だせっ!昔からだせーなツナは。
勝手に口が開いて声を発する。

「あんたなんか死んじゃえばいいのに」

ぎゃああああ!やめてあげて昔のあたし!でも、確かにあたしツナにそうやって言いました!ツナが忘れてればいいな。思いだされたらすっごくやっかいだよ!みるみるうちに泣き顔になるツナは「うわああああんっ」と喚いて家を出ていった。どうしよう。何この罪悪感。戻れ!戻れ!元に戻れえええ!
またもや誰もいない家にポツンと残って玄関から動こうとしないあたしは一体何がしたいんだ?何故今も泣き続ける?誰を待っているんだよ。知っているだろう?もう、この家には誰も帰ってこないんだよ。あたしを迎えに来るものなんていないんだから、そんな願うような顔をしないでよ。願っても叶わなかったんだからもうやめなさい。

「もう、あえないの?」

やってしまったねこれはあれだね。あたしにとりつこうとしているね。気付くと元の自分になってあたしは玄関に立っている。一つ違うのは目の前に黒髪美人の伊藤さんが立っていることだ。彼女はあたしが夢の中で見た様にボロボロで傷だらけだ。真珠の様に白い肌だから青痣が凄く目立つ。

「ねえ、あなたはホントの伊藤浅黄じゃないでしょ。よくよく考えると話が合わないんだよね。だって5年前の事を雲雀が知らないはずないし、それにあなた見たいな美人さんをあたしがチエックしとかない筈がないもん!」

喋りかけても彼女は無表情のままゆっくりと傍によってきた。美夜ちゃんが一番嫌いな事は話をスルーされる事なんだよ!構ってよ!せめて「うん」とか「はいっ」て言おうよ!

『一緒に待ちましょう?』

ぎゅっと背中に手を回され抱きしめられた。え、何これ?ほんとは殴ってやろうかと思ったけど彼女の赤い眼から涙が流れていたからそれはできなかった。温もりはなくとても冷たい。ヤバいんじゃないだろうか。
ツナに死ねばいいとか言ったから天罰くだったのかな?過去を掘り返すなんてひどいぜ。

『1人は寂しいの』

段々と力強くなってる気がする。苦しいです!美人に抱きしめられるのは凄くうれしいんだけどね。あたしも彼女を抱きしめ返す。ビクッと震えていたけど直ぐにあたしを抱きしめる強さを戻した。

「あのね、貴女は待つ人がいるかもしれない」

取り付かれてたまるか!この体はあたしのだ!誰にも渡さん!ん?何かちがうな。

「あたしには帰ってきてほしい人なんていないの」

めずらしく笑って言うと電撃の様なものがあたしと彼女の間に走り、彼女は悔しそうな顔をしてあたしから離れた。

『もう少しだったのに!』

「あたしはもう待ってるなんて嫌だし、叶わない願いをし続けるのも嫌なの。だから、なにもいらないの。この世で1番大事なのは自分で、2番目がペット、3番目はあたしから離れない人」

『嘘をつけ!そんなわけがないっ』

「離れてった人間何かどうでもいいに決まってるじゃん。待ってて欲しけりゃ電話の一つぐらい寄越せっつうのおお!」

『!?』

勢いよく玄関から風が吹いてきて宙に浮くと思ったら自分の体に戻ってきていた。

「はら、減った」

脱力感がすごいんだがこれ。うわ。めっちゃ汗かいてるし着替えてー
雲雀に受け止められていたらしい。目覚めに雲雀の顔とか生きてるって実感わかないなあ。それにしてもまだまだ意識が遠いとこにある気分だ。床に落とされたら衝撃で戻るかな?よし、そうするか。さっきの声が雲雀に聞こえなかったみたいだから今度は少し大きな声で「腹減っ、た」と言ったら予定通り落とされた。期待を裏切らない男だなあ。


蜂蜜漬けのをどうぞ


廊下を歩いているとピアノの音が聞こえた。その音楽は心の何かを揺さぶる嫌な曲だった。あ、なんか嫌なこと思い出した。
美夜の両親とお姉さんが外国に行ってあいつが1人になってしまった頃、まったく美夜が家から出てこないから心配して家に行ったんだよな。インターホン押しても出てこなかった。ドアのとってを引いてみたらカギがかかってなかったので中に入ろうと一歩踏み出すとさっそく転んだんだっけ。顔を上げると美夜が玄関に泣きながら立ってて俺に向かい「あんたなんか死んじゃえばいいのに」って今のように感情のない顔で言われたんだよな。
あれはないでしょ。かなり傷ついたかんな。ま、今は俺の制であいつが1人になったって知ったから逆に罪悪感で一杯なんだけどね。寧ろ俺の父親の制だろ。反省しているとピアノの音は止まって、また廊下は静かになった。




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