私は理科室の準備室に閉じ込められて… そして飛び降りた。そりゃ3階から落ちたんだ無事なわけがない。 痛みすら感じなくて悲しみだけが私の中に残っていた。そのうち意識が遠のいて行って気がついたら右手が何かを握りしめる感触がした。 ある程度の重さのものでそれに眼を移すといつのまにか場所は保健室に変わっていた。手に握りしめていた物は柄が黒くて市販で普通に販売されてて家でよく料理に使ってるものだった。 私の名前はイトウアサギ。 彼が私の名前を元気で可愛くていい名だって褒めてくれたから私は自分の名前を気に入っている。 だけどもう私の名前を呼んでくれる人はいない。 包丁をよく見ると血が付いていた。なんで?私は何もしてないのにどうして? 廊下側から2番目まで、ベットのあるカーテンがしまっている。 そのベットの下は血の海だ。微かに咳をするのが聞こえて怖くなって包丁を落として保健室を飛び出した。 私じゃない!こんなことしないっ。だって、こんな事したら彼に嫌われちゃうもん。 外を見るといつのまにか放課後で外は赤い夕陽にそまっていた。窓が鏡になって自分が映る。人に妬ましがられた顔と栗色の髪の毛。人間の嫉妬で私は傷ついてきたけど彼がいたから平気だったんだよ。だけどその顔も髪も知らない人の血で汚れていた。 このままじゃ自我を失いそうになって怖くなって屋上に駆け込んで、また私は飛び降りた。スローモーションのように宙を飛んでいったけどそこから私は死んだのかもよくわからない。だけど教室に置いていってしまった携帯の着信音が頭の中から離れなくて彼女は私が今まで隠して抑えてきた感情を制御できなくさせる。 彼女の中の人間に対しての恨みは大きくて私の問いかけにも答えてくれない。私は探していた。ずっと此処に留まりたくなくて自分の携帯を見つけて私を救ってくれる人を。 やっと私の携帯を見つけてくれた人も彼女は殺そうとしている。生きて、がんばって。私の体で暴れまわる彼女を止めて。私とは正反対の黒髪で美人な顔の彼女はボロボロで辛そうなの。ほんとは人間全部を恨んでるわけじゃないと思う。きっと理解者がいなくて寂しいだけなの。私じゃもう彼女の話を聞けない。私の体はもう彼女のものとなってしまった… 風紀院長さん。貴方には私が与えられる限りのヒントを与えたつもりなのよ。赤い茶髪の女の子は私達と同じ闇を抱えてる。彼女に付け込まれたらあの子も危ないよ!私にはもう守ってくれる人がないけど、君たちは守ってあげて、私の友人(人体模型)に優しくせっしてくれたあの女の子に。 ニピング・レイン 長い廊下をひたすら歩く。今はそれしかできないから別に立ち止まる事もしない。 「草壁。伊藤浅黄について調べて、あともっと昔の並中で人気だった女子の事も」 僕がなんで女子の事何か… 知りたくもないけどこんな世界一刻も早く出たいからね。別にあの草食動物達がどうなろうと僕には関係ないし美夜がどうなろうとほんとどうでもいい。 「すぐにね。…君には関係ないよ。僕はイラついてるんだ。咬み殺すよ?」 怯えた草壁の返事が終わる前に電話を切った。自分の足音しか聞こえない廊下は何処か寂しげだ。まるでこの学校自体が誰かを待ち望んでるみたいに。 微妙に違う校舎の作りはたぶん5年前行方不明になった伊藤浅黄と彼女の身体に住み着いた黒髪の女の記憶が混ざりあってできたからだろう。まぁ、此処が並中でないならいくら壊しても構わないからそこら辺はいいかな。 何も起こらないと思ったら音楽室の方からピアノの伴奏する音が聞こえた。ふーん。てっきり草食動物達に手一杯なのかと思ったよ。 音楽室前まで歩いて来たら僕が来た方の反対側の廊下から美夜達が走ってこっちに向かってきた。なにこいつら。楽しんでんの? 「あ、雲雀じゃん」 「生きてたんだ」 「美青年に助けてもらっちゃった!うん。雲雀は美青年に負けるね」 むっ。僕が負ける?そんなわけないでしょ。そいつと戦いたいんだけど。 「何で負けるのさ」 「顔」 スパーンと美夜の頭を叩いてから山本武の方を見ると疲れきった顔をしていた。なんでこの子こんな元気なの? お守りに疲れたのか… 「ところでこのピアノ早く止めなきゃね」 頭を押さえながら焦りもせずに美夜は空いた片方の手でドアを開けて中に入っていく。 ちょっとは警戒しろよ。 「七不思議では確かこの伴奏を聞いたら曲を完成させるしかないんだよな」 山本が困った顔で説明していたが完成するにもなにも何をどう完成させればいいのさ。 「この曲たぶん2人で弾くものなんじゃない?」 ピアノの方を見るが鍵盤はデコボコになっていて誰かが弾いているようだがその姿は見えない。 |