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:( 10階から墜ちた日



人間は醜い生き物だ。
お互いを傷つけあい、私利私欲のために命をも物とし扱う。

俺もその人間だけど、人を傷つけて平気でいられるような奴ではないし、命を軽く見たことなんかない。

同じ人だとしても君らが恨んでいる"人間"ばかりじゃないんだよ。

騙した、騙したって…
それなら君だって少女に化けて俺達を油断させようとしたじゃないか!

美夜が前に猫を抱いて言っていた「人間なんかより動物の方が信用できる」って…
その時はお前もその人間だろ、と突っ込んだけど今思うと俺もそうだと思う。

『あんた達よりましよ』

冷たい…とても冷たい声が俺の言葉を退ける。
必死に考えた。何を言ったって無駄だけどそれでも何か言わなければならない。
京子ちゃん達を守れなければ…せめてこの場から逃がさなきゃ!

俺の傍に寄ろうとする黒川達を止める。相手に気づかれないよう背中で手を隠して。
先に2人で逃げてもらうために廊下を指さすが、黒川も京子ちゃんも首を横に振るう。
断られちゃったよ!どうしよう…。
荒く廊下を指さしても断固拒否され、仕方がないから少し殺気を込めた眼で2人に顔を向けると戸惑いながらも首を縦に振ってくれた。

リボーンに殺気なら何回も向けられてるからなぁ。
俺も身についちゃったのかな…
やっぱ、マフィアのボスに向いてんのかな俺?
一体どんな顔してたんだろ。色んな意味で悲しくなってきた…だって俺が睨んだって効くわけないと思ってたからさ!

『…お兄ちゃんも、私を殺すの?』

チャンスは一度。相手に隙を作らなきゃ!俺なんか見なくていいから黒板とか、窓とか見てくんないかな!
小首をかしげたって人間の形をしていても牙だの爪とか鼠みたいな顔してたら「人」とは見えいからっ!

「わからない」

そう答えたら目つきが変わった。

「君が俺達を殺そうとするのなら、俺だって対抗するから」

嫌だな…俺こーゆう論理嫌いなんだよな。
殺られる前に殺れ。見たいなの
だけど、それを聞いて少女は下に俯いた。
すぐさま黒川達はドアを目指して音を立てないように走る、気づいた少女は机に飛び乗り口を大きくあけ2人に襲いかかろうとした。

『ギィイイイイイイ!!』

思わず耳を塞ぎたくなるような鳴き声に2人とも足を止めようとしたが「走れ!」そんな声がどこかで聞こえた気がした。俺が言ったんじゃない…、でも確かに聞こえた気がしたんだ。

―ドンっ

少女の形をした鼠に椅子とともにぶつかる。山本見たいに椅子を投げれるほど力ないし。
おもいっきり壁にぶつけられ、血を吐いた鼠の化け物から離れて椅子を落とす。
京子ちゃん達は逃げ切れた。後で俺も追い付くんだ。だけど、血を吐いた鼠を見ると毒殺された死骸が頭に浮かびあがり罪悪感と吐き気に覆われる。

ヨロヨロっと起き上がり覚束ない足取りで俺の方に向かってきた。その目には余裕などなくて、憎しみと恨みをこめてこっちを見て溢れ出るように涙を流し俺を攻め立てる。

どうすればいい?どうすればいんだッ!

俺には殺すことなんか無理だ…
かといって黙って殺される事もできない。

ヨロっと腕を上げ鋭い爪で俺を掴まえようとしている。あまりにも怖くて目をつぶった。ガシッと肩を掴まれたと同時に爪が両肩に食い込んで凄く痛い。
長くするどい鼠独特の門歯が俺を噛み殺そうとしている…

「俺には…」

『ギッ…!』

急に両手を掴まれた鼠はジタバタと暴れて振りほどこうとする。だけど少女に化けた制で体格差がありほどけない。また、凄い鳴き声をあげ俺の腕を噛む。
血が袖に滲み出来てきたが今は気にしていられない。
腕を噛んでいる制で口はふさがれ両腕もしっかり掴んでいるから攻撃はできないはずだ!
腕の痛みを我慢して少女を掃除用具入れまで引きずり押し入れる。
中々腕を噛んだまま離そうとしてくれないので、仕方ないからおでこにデコピンした。
歯が腕から離れたらすぐにドアをしめると開けようと掃除用具入れの中であばれるので必死にドアを押さえた。

鳴き声は段々小さくなり、ドアを開けようとする力もなくなった。
鎮まりかえった教室。今だ震えも腕から流れ出る血も止まらない。
ドアに全体重をかけ抑えるが、押し返してくることはない。
開けようかな…。でも、これも作戦だったらどうしよう…
また、襲ってきたら、そしたら今度こそ俺は…
確認しないままドアから離れたらそれこそ危ない、よね。
早く京子ちゃん達に追いつかないといけないんだ!

―ガチャッ

恐る恐る覗いたが、中には箒とチリトリバケツしかなくて…
バケツの中には仰向けになって血を吐いて死んでいる
一匹の鼠がいた。

10階から天使が墜ちた日

早く2人に追いつかなきゃいけないと分かっているけど。
足に力が入らなくて、そのばに座りこんで泣いた。

「ごめんっ。ごめん」

謝ってもこの鼠にはもう届かないんだ…
気づいたら携帯を取り出して電話をかけていた、




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