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;> 雪みたいに死ぬ



また、美夜達とはぐれてしまった…
今度は山本も。

できるだけ応接室から離れようと逃げてたら黒川に首根っこを捕まれて左にも右にも自由に動ける1年の教室に逃げ込んだ。

「沢田!あんたシャッキとしなさいよ!」

「は、はい!!」

窓側の中間の机に腰を掛け腕を組む黒川も微かに震えいて、その隣にいる京子ちゃんも怯えている。
お、おれ?勿論震えてるよ?足ガクガクで立ってられなくて教卓の隣に座りこんじゃってるけど?
シャキット…そうだ!男は俺1人で、2人を守るんだ!
と、取り敢えず早く雲雀さんや獄寺君達と遭遇したい…
美夜は…あいつはあの携帯持ってるから問題外だな。














窓ガラスが割れる事にいち早く気づいた俺たちは直ぐに応接室から飛び出した。
間に合わなかった獄寺君は美夜を抱き締めて廊下に倒れ込んでいた。
心配で後ろを振り返りながら走ってたんだけど美夜は獄寺君に引かれて、その後ろに山本もいて俺たちとは反対方向に走ってった。

何だかんだ言って獄寺君は美夜の事を嫌いじゃなくて安心した、後ろ姿で走ってたからよくわからなかったけどワイシャツから血が滲んでいた気がしたからあれは美夜を庇ってついた傷だろう…
たぶんアレだけじゃなくて廊下におもいっきりぶつかってたし…肩を痛めてる可能性はある。

美夜は律儀な所あるし、自分の制だとしったら借りをかえそうとするだろう…
少しは山本や獄寺君の負担は無くなるかな…?

『お兄ちゃん』

突然グイグイと袖を後ろから掴まれて呼ばれたけど、後ろを振り返らずに黒川達の方を見る。
教室中に響きわたる幼い少女の声。こんな場所に普通の人間が居るはずがないんだ…

油断していた。たぶん2人共もそうだ。

冷や汗が流れる、『ねぇねぇ』声は消えることなく俺の後ろから聞こえる。
京子ちゃんが黒川に近づいたって事はやっぱり後ろに居るのは人間ではないて事。

『お兄ちゃん?』

泣きそうな声で呼ばないでくれ、俺に縋らないでくれ、君を助けてあげられない、なにもできないんだ。
ごめん美夜。やっぱお前があの問題の携帯持ってたとしても今すげぇ会いたい。
美夜だったら人間じゃなくても怖がらず普通に話してあげられるだろうし助けようとするだろ。

あいつの事を考えたら俺もこのままじゃ駄目だと思い、おそるおそる後ろを振り向いた。
俺の袖をちょこんと掴んだ小さな手の先には二つ縛りの可愛いピンクのワンピースを着た女の子が居た。

『お父さんを助けた?』

「えっ…」

小さく首を傾げて俺を見つめる。まるで小動物見たい…
お父さん?この子のお父さんに何かあったのか?
助けた…て、そんなの知らないし…
俺の方が今助けられたくてしょうがないのに!

「沢田!」「ツナ君!」

京子ちゃん達の方に顔を戻せば指をさして口をパクパク動かして何かを伝えようとしている。

「この子は、」

「ツナ君後ろぉぉ!『うるさいッ!』ひッ」

この子はただの女の子だよって言おうとした…のに。
強い風が俺の後ろから吹いて京子ちゃんと黒川を吹き飛ばす。机や椅子に打つかって転んだ2人は起き上がらなかった。
急いで傍に駆け寄って2人の名前を呼べば小さく返事をしてくれて黒川は頭を押さえて上半身を起き上がっらせた。

あの女の子がやったのか…そう思うと凄く悔しかった。
その子の方を睨むと可愛い女の子の姿のまま、眼は赤く爪は長くて、しゅると長い尻尾がチラリと見える。
頬からひげが生えていて…顔はまるで鼠…ッ

『助けてくれた?』

ニヤリと笑う少女はこっちを見て歯をチラつかせる。
ちょ、腰抜けた!やばっ!

『殺したでしょ?』

頭が痛いイヤホンをつけて大音量で音楽を聞いてる気分だ。

『お父さんもお母さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんも弟も妹もおばあちゃんもお爺ちゃんも、みーんな、みんな、あんた達が殺ししたんだぁぁぁ!!』

目をかっぴらいた女の子は怒りで満ちあふれいる。

「いやぁぁあああツ」

「なによこれツ!!」

京子ちゃんは気絶していたようで目の前にある光景を見て涙を流した。
俺たちの回りにはいつの間にか大量の鼠の死骸があったんだ。
黒川はそれを避けて京子ちゃんを抱き締めて落ち着かせる。
俺はただ人間に恨みをもって化け物になってしまった少女の姿をした鼠を見ていることしかできないのかな…

俺、鼠今まで殺した事もないし寧ろ本物を見たのが今ので初めてなのに!
ハムスターならあるけどさ!
嫌いじゃないし、どっちかつーと好きだったのにこんなことがあったんじゃトラウマ確実だよ!

今にも飛び掛かってきそうな勢いなのに唸るだけて目の前にいる少女の姿をした鼠は襲ってこなかった。

そりゃ自分達はただ生きてるだけなのに捕まえられて殺されちゃ人間を恨むよな…
俺だって許せない。

傍で血を吐いて死んでいる鼠を撫でた。
毒殺されたんだろう…餌だと騙されたんだね。

「それでも君だって」

怖い凄く怖いけど、俺が今から言うことは間違っていることかもしれないけどさ、言い訳だって思えばいい。
それでも鼠に種類があるように人間にだって色んな人がいるんだ!!

机に寄り掛かってゆっくりと立ち上がる。

「鼠を好きだった俺を騙したじゃないか!」

教室に響き渡った俺の声は少女に届いたのか届いてないのか分からないけど、黒川も京子ちゃんを支えて立ち上がった。





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