((逃ゲテ)) 苦しい。なんで急に? それに、体が重いなぁ… いや、あたしの体重がおもすぎて動かないて意味じゃなくてさ。 腕を動かそうとも重くて動かないし…重力だよね…それでだよ! 最近怠けてたからなぁよりにもよってこんな時に重力に逆らえず寝てないとならないなんて。 ついてないなぁ。 て、「う"ぞだぁぁぁぁ!!」 ないないない!あるわけないし!そんな事ない! これは夢ん中なんだよ。そうだよ。あたしいつの間に寝たんだろ… 獄寺怒ってんだろうなぁ、寝てる間に襲われたらどうしよ。 目をあけるとあたしの腹にのり首を絞めている女の人がいた。 だけどお腹に押さえ付けられている苦しさはなかった。 だって彼女は軽いから。 冷たい手が首を締め付ける。 苦しいと思ったのはこのせいか! 重かったのもこいつのせいだったんだ…太ったんじゃなくてよかった。あれ、いいのか?よくないよな。 これ、もしかしたら死んじゃうじゃん? てか、既に苦しくて死にそうなんだけど。 負けじと白くて細い手首を掴むがこいつまぢで女?てくらい彼女は力が強かった。 離そうとすればするほど力は強くなっていくから、手を離して髪の毛を掴んだ。 あたしの首を締める奴の面を見たかったからなんだけどさ。 やっぱ誰に殺されたかとかはしっときたい。 そしたら頬にポツリと雫が落ちてきた。 一つまた一つ落ちてきてあたしの頬を流れる。 あなたは浅黄さんだよね。人の首を絞めといて何を泣いてるんだこの人は、 「くるっ…し」 相手が幽霊だとしても元は人間なのだから話しくらい通じないだろうか。 なーんて期待しなきゃよかった、彼女が首から手を離すことはない。 綺麗な顔、小柄で可愛らしいお人形さんの様な丸い眼には悲しみがあふれでている。 笑えばきっともっと可愛いんだろうな。 ((止メテッ…止メ…テ)) 写真でも切なげに彼女は写っていた。この人は何を求め、何を望んでいるんだろう。 「―あっ…たか」 ん?苦しくてよく聞こえないよ。意識が薄れて行ってしまう… 手を離してくれ。 せっかくあなたの話を聞けるんだから。 「ど…っして」 「…許っさ―…ッい」 「ずっと待っ…てるのに」 「早く、あ…―ったい」 「どこ…に、…―るの」 ((ワタシヲ忘レナイデ、ワタシハ此処二イル、ズット貴方カラノ連絡ヲ待ッテイル、電話ヲ頂戴、メールヲ頂戴、声ヲ聞カセテ、姿ヲ見セテ、何時モナラ来ルノニ、何時モナラ、イツモナラ、…)) 頭の中に流れ込んでくるのは…これは彼女の思い? ボロボロになった制服の下には傷ついた体があった。 ((…イラナイ)) 彼女自身ボロボロじゃないか。 誰かにやられたのか? だったら雲雀がそんなやつら咬み殺しちゃってくれるよ! ((鳴ラナイ携帯ナンカ)) 一体何があったんだよ… あなたが探す"彼"は一体誰の事で、"彼"はどこへいってしまったんだい? ((イラナイ))) 頭の中に入り込んでる声はとても綺麗ですきとおる声なのに彼女自身が話す声は霞んだ低い声だった。 次第に頭の中に入り込んでくる声は消えて行った。 「ど・・-して?」 「ご―-め―・・・い」 「―-けて・・たす―-け」 「どこ・に・・いるの?」 「―-れを返し・・て」 「――…彼を―-して」 「―…彼を返して!!」 確かに聞き取れた声と共に暗闇へと落ちていった。 ―バシッ 頬に走る激痛と共に目を覚ますと眉間におもくそ皺をよせた獄寺と心配そうな顔であたしを見る山本がいた。 「なに呑気に寝てんだ馬鹿!」 「すっげぇうなされてたぜ?」 「まぢか、まったく呑気に寝てねぇじゃねぇか。てか、夢の世界まできたよ浅黄さん。」 改めて気付いた。微かに香る薬の臭いそしてこの寝やすさは保健室以外ないと。 なんでベットで寝てんだ? 散った赤い花弁がまるで血のようで 窓ガラスが割れた応接室に彼女はまだ立つくしている。 長い黒髪に傷だらけの体それを包み込むボロボロの制服。 「…―さないッ」 彼女自身この場に留まる理由など知らない。 「許さない…」 誰を恨んで、憎んでいるのかもわからない。 ただ動いてしまうのだ。 音もたてず、飛び散った窓ガラスを踏みもせず彼女は動き出す。 自身の捨てた携帯を求めて… |