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そんな自分がイヤ 百蘭




「彼を死んでなかったことにしてよ」

「絶対いやだね。僕は自分の特にならない事はしない主義だから」

「別にいいじゃない。暗殺部隊のベルフェゴールの兄だって死んでなかった事にしたんだから」

「ジル君は僕の役に少しだけ立ったじゃん」

「なら、執事までも生かす事はなかったじゃない?」

「王子様って実際1人じゃ何もできないから執事が必要なんだよ。だから執事君の方が強いってパターン多いでしょ?」

うーん。と首を傾げて腕を組み悩む名前ちゃんはどうしても「彼」を生き返らせて欲しいらしい。
名前ちゃんはその為にミルフィオーレに入隊して実力を上げ僕とこうやって話せる程の地位まで上り詰めたのだ。健気だよねぇ。
この台詞は1日に4回以上聞いている。早く諦めればいいのに名前ちゃんは何度も頼みにくる。僕は会いに来てくれるのは嬉しいから別にいいんだけどね。

「そんなにその"彼"が大切なの?」

「じゃなかったらこんなに頼まないし」

「うわっ!その即答なんかムカつく!」

「百蘭も私の気持ちを知ればいいよ。愛してる人の死はどんな傷よりも凄く痛くて、呼吸がうまくできなくて苦しくなるから」

真剣にそんな事を訴えられてもねぇ。名前ちゃんが死んでくれたら分かると思うけど君は長生きしそうだか無理だね。

「じゃあ聞くけど、君は彼の死をその眼でしっかり見たんだよね?血だらけになって自分を庇って死ぬ彼をさ。息をしてなくて心臓が止まった彼が棺桶に入るのも、葬儀所で燃やされるのも最後までずっと見たんだろ。灰になった彼が生きてる可能性なんて0%に等しいんだよ」

事実を告げると名前ちゃんは悲しい眼をして唇を噛み締めていた。僕は「もしかしたら」をほんとにする事が出来るけど灰になった人間をどうやったら「死んでなかった」って事にできるんだよ。そんな事が出来たら僕は神様じゃん。

「無理だって分かったでしょ?これからは早く「彼」を忘れる事だね」

「忘れるわけない」

「!いい加減にっ…」

小さい声で彼の名前を呟いて名前ちゃんは部屋を飛び出して行った。
僕は愛する人が死んだ人の気持ちは分からないが名前ちゃんがどれ程「彼」の事を愛しているか知っているんだ。
だからこそ能力を使うのが怖いんだよ。
もしも生きてる「彼」を見つけてしまったら、死んでなかったことにしてしまったら名前ちゃんは僕を必要とする事もなくなってもう会いに来てくれないだろ?

そんな自分がイヤで仕方ないのに、それでも傍にいて欲しかった

彼女はまた今日も僕の元へ訪れた。
昨日の事など気にせず。


そしてまた―…




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